『柴田元幸 ハイブ・リット』(1)

柴田元幸信者としてはこれは買わねばなるまい。柴田元幸翻訳による6人の現代アメリカ人作家の短編集。しかも、本人による朗読CD付き。原文+朗読と翻訳が「ハイブ・リット(もちろん柴田先生の造語)」たる所以。そして、なんと大トリを飾るのは、ポール・オースター

Amazonではずっと品切れだが(たぶん版元でCDのプレスが間に合わないのだろう)、丸善本店でちょっと前に捕獲しておいたのを読み/聴き始めたので、作品毎に簡単に感想を残したい。

動物園の猿を主人公にするショート・ショート。現在形で語られることで、読者は「何でも起こりうる」という不安定さを味わることになるという解説通り、なかなかスリリングだ。ここでは動物園の檻の中で夢見る猿が主人公だが、これはもちろん社会の中で息詰まる思いをしている人間を戯画的に描いていると読むべきだろう。面白く、やがて哀しいお話。ユアグローの朗読も大いに芝居がかっていて、悲哀を感じさせる。

柴田元幸ハイブ・リット

柴田元幸ハイブ・リット