『トップ・レフト』でデビューした黒木亮の大作『巨大投資銀行』を読んだ。
- 作者: 黒木亮
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/10/25
- メディア: 文庫
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1980年代から2000年頃までの金融界の実際のトピックを元に、MS、ソロモン、CSFBの投資銀行で活躍する3人のバンカーの姿を描いている。実際に金融の知識のある読者にとっては、やや教科書的で予定調和な傾向を感じる部分も多いとは思う。だが、エピローグで希望を感じさせるところは、著者の作家としての力量もあろうが、何よりも日本の金融界に対する期待でもあろう。日本の金融機関も登場はするものの、大蔵省による規制下からグローバル競争に巻き込まれる中で、旧態依然とした時代遅れの部分が強調されている。だが、それではダメだという著者の問題意識に共感せざるを得ない。
近年は、むしろ欧米の金融機関の弱体化が言われることが多いが、それでもビジネスに向かう彼らの貪欲さはこの作品で著者が描いている通り図抜けたものがある。現在の混乱が終息した後に残るのは、グローバルでの激しい競争に他ならない。そこで勝つためには、今確かな手を打たねばならないのだ。その意味では、強い使命感を持った金融マンが今ほど求められている時代もない―そう思う。