『ハッピーエンドにさよならを』

今年に入って四冊目の歌野晶午は、短編集の『ハッピーエンドにさよならを』。「おねえちゃん」「サクラチル」「天国の兄に一筆啓上」「消された15番」「死面」「防疫」「玉川上死」「殺人休暇」「永遠の契り」「In the lap of mother」「尊厳、死」の11篇を収める。

歌野晶午の得意とする叙述トリックを中心にした作品が多いが、共通しているのは、後味の悪いエンディング。タイトルの通り「ハッピーエンド」とは対極の「バッド・エンド」。最後の一行で驚かされるものもある。ジャンルとしてはミステリーもあり、ホラーもありといったところか。

ネタとしては強烈な印象を残すものはない。いずれもミステリ作家にとっての「ネタ帳」みたいなもの。やろうと思えば、ここから長編まで引っ張ることもできなくはないだろが、この作家の場合、長編だと中弛みする傾向もあるので、実はこのくらいの短編にする方が作家の持ち味に合っているかもしれない。