『柴田元幸 ハイブ・リット』(2)

これは凄い小説。恋人同士の二人。お互いを必要不可欠にして、離れられないようにするため、主人公は耳を聴こえないようし、相手は目を見えないようにする。その設定が冒頭の一行で語られたあと、二人の過ごす時間が詳細に語られていく。恋人のピアノコンサート、二人で部屋で過ごす時間、それから、美術館でのターナー鑑賞…。

愛が生み出す肉体の欠損。肉体の欠損が生み出す愛。これは『ピアノ・レッスン』のようでもあり、小川洋子の小説のようでもある。

一途な愛は悲劇に向かい、悲劇こそがその愛を永遠のものにする―レベッカの朗読は淡々としていて単調だが、それがかえって重さを感じさせる。

柴田元幸ハイブ・リット

柴田元幸ハイブ・リット