『村上春樹 ハイブ・リット(2)』

カーヴァーの他の作品と同様、この作品も人と人とのどこか居心地の悪い関係を、リアルに描いている。だが、その居心地の悪さが頂点に達した瞬間、物語は一気に結末に向かう。もちろん、その結末は、決して人生におけるハッピーエンドというようなものではないが、それでもそこには確かな「救い」がある。人生はまだ捨てたものではないと思わせるだけのものがある。

結局のところ、普通の人間でいることをどんなときにも保つことは容易ではない。そのためには、ちゃんと食べて、ちゃんと眠ることが大切なんだと思う。当たり前のことなんだけれども、異常なことが起きたときには、当たり前のことができなくなる。そして悪循環に陥りやすい。

タイトルの"A Small, Good Thing"を「ささやかだけど、役に立つこと」と訳した村上春樹は凄いと言わざるをえない。

村上春樹ハイブ・リット

村上春樹ハイブ・リット