- ささやかだけれど、役に立つこと/レイモンド・カーヴァー
カーヴァーの他の作品と同様、この作品も人と人とのどこか居心地の悪い関係を、リアルに描いている。だが、その居心地の悪さが頂点に達した瞬間、物語は一気に結末に向かう。もちろん、その結末は、決して人生におけるハッピーエンドというようなものではないが、それでもそこには確かな「救い」がある。人生はまだ捨てたものではないと思わせるだけのものがある。
結局のところ、普通の人間でいることをどんなときにも保つことは容易ではない。そのためには、ちゃんと食べて、ちゃんと眠ることが大切なんだと思う。当たり前のことなんだけれども、異常なことが起きたときには、当たり前のことができなくなる。そして悪循環に陥りやすい。
タイトルの"A Small, Good Thing"を「ささやかだけど、役に立つこと」と訳した村上春樹は凄いと言わざるをえない。

- 作者: 村上春樹(編・訳),柴田元幸(総合監修)
- 出版社/メーカー: アルク
- 発売日: 2008/11/28
- メディア: 単行本
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