猿の翻訳〜モンキー・ビジネスVol.5

柴田元幸責任編集の『モンキー・ビジネスVol.5(対話号)』を読む。

モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号

モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号

今回は文句なしに面白い。まず、村上春樹のインタビュー(聞き手:古川日出男)。これほど包括的でストレートなインタビューはいまだかつてなかったと思う。『1Q84』の刊行のタイミングに合わせたのだろう。このあたり柴田・村上の関係の良さが窺われる。
続いて川上弘美小川洋子の対談。司会が柴田元幸。これは二人の作家の違いが浮き彫りになって面白い。ここでの柴田氏の役割は、表記の上でも対談の中でも控えめであるが、不可欠なものだ。
それから「うたの猿山」という翻訳を絡めた特集。「猿」を主題とする俳句・短歌・現代詩の作品をいったん英語にして、その3作品をまったく別の3人の作家が、日本語の俳句・短歌・現代詩にするというもの。オリジナル(日本語)3作品、英訳3作品、再和訳9作品が楽しめる。作家は「穂村弘×小澤實×水原紫苑×小池昌代×テッド・グーセン×佐藤文香×四元康祐」。

「文学を翻訳するということ」に関する柴田元幸の問題意識を垣間見ると同時に、実例が味わえて実に興味深い。いや、「実例」といっても単なる「サンプル」というものを超えて、文学作品として鑑賞し甲斐もあるものになっている。猿が主題というの、「モンキー・ビジネス」を地で行っているようで愉快だ。

やはり柴田元幸の活動からは目が離せない。