『柴田元幸 ハイブ・リット』(4)

スチュアート・ダイベックという作家は、この本を読むまでは知らなかった。だが、この『ペット・ミルク』は本当に素晴らしい。泣けるほど素晴らしい。これだから柴田元幸氏の仕事からは目が離せない。

ストーリーは、主人公が「ペット・ミルク」という言葉から、自分の人生を振り返るところから始まる。満ち足りていた幼少期。やがて成長して、学校に行くようになり、職を見つける。その頃出合った人たち、行きつけの店。そして、忘れられない思い出。

語り手は、おそらくそれなりに年を取っているのだろう。人生を振り返るとき、ペット・ミルクのように甘く、無性に懐かしく感じられる瞬間がある―それが真実なのだろう。

全体を通じて、アメリカの短編小説のお手本のような出来だ、と思ったら、O・ヘンリー賞受賞ということだ。著者の朴訥な朗読もとても味わい深く、何度も聴きたくなる素晴らしい作品。この著者の他の作品もぜひ読んでみたい。

柴田元幸ハイブ・リット

柴田元幸ハイブ・リット

定価は2,500円。だが、相変わらず品切れが続いているせいか、Amazonマーケットプレイスで7,250円の出品も…