”2”のジンクスを免れず〜『パシフィック・リム: アップライジング』(2018年、アメリカ)

ギレルモ・デル・トロ監督のオタク心、特に、日本のアニメや特撮が大好きな彼が、リスペクトする作品群へのオマージュをふんだんに取り込んだ『パシフィック・リム』が大好きだった。

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あの戦いから10年。

世代を変えつつも、怪獣が人類を襲い、イェーガーを操るパイロットが怪獣と死闘を繰り広げるという世界観は変わらずに、続編が作られた。

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しかしながら、メガホンをとったらのは、スティーヴン・S・デナイト

トランスフォーマー』などで脚本参画の経験はあるが、この手の大型の映画は事実上初めて。

怪獣はスケールを増し、パイロットには少女も加わって「群像劇」の様相を強め、おまけに日本へのオマージュとして最終バトルを富士山にするというサービス精神を発揮。

だが、デル・トロの持っていたアクというか、オタクならではのこだわりみたいなものは大幅に薄れ、ありがちな戦闘ロボットものになってしまった。

これはテレビでの仕事も多いデナイトの個性なのかもしれない。

ストーリーはわかりやすく、バトルは基本的にパワープレイ。

人物は、いい奴と悪い奴がはっきりと分かる。

主にアメリカの視聴者を意識して、単純すぎるくらいに単純化されてる。


しかし、東京の光景がまるで香港だったりとか、富士山までが近すぎるとか(アメリカ人のスケール感からするとそうなんだろうけど)、宇宙空間に簡単に飛び出して、同じように簡単に大気圏突入しちゃうとか。


まあ、端的に言って、大味にも程がある。


傑作の続編が「2」として作られることが多く、その結果、クオリティも、興行収入も下降してしまうというジンクスがあるが、この作品もその例外ではなかったという感じ。


まあ世界観を壊さなかっただけマシ、とういことかもしれない。

前作は日本の特撮オタクから見ても「最高!」と言えるくらいの作品だったが、今回はアメリカの特撮作品の中の一つとして埋没しそうな量産系ロボットバトルになってしまったという感じ。

前作を生み出したギレルモ・デル・トロ監督の才能を改めて思い知る皮肉な作品となった。