庵野秀明ワールド全開〜『シン・仮面ライダー』

シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』に連なる昭和特撮のリメイク『シン・仮面ライダー』を観てきた。

石ノ森章太郎の原作の持つ「改造人間の孤独・苦悩・悲哀」を軸にしながら、自分が戦うことの意味を問い続ける庵野秀明ワールドの主人公が繰り広げるエヴァ的な世界観で、ある意味で「豪華な同人映画」といった趣。いい意味で。

「大衆ウケなんかどうでもいい」とばかりに原作オマージュを随所に散りばめ、また、最新の技術がありながらも昭和の手作り感をあえて再現するような特撮へのこだわりの強さが爆発。

ディテールが一気に拡大するところを含めてバランスの悪さ、歪さが目立つのだが、そういうところがオタクの心を刺激してたまらない。血が湧き、肉が踊り、鳥肌が立ち、ついには泣いたりと期待以上に魂を揺すぶられる。

中でも、浜辺美波の演じる緑川ルリ子は、エヴァ的な戦闘美少女の強さと昭和ヒロイン的な翳りの両方を帯びていて絶品。
浜辺美波の出演する作品はまあまあ観てきたと思うけど、今回の『シン・仮面ライダー』の緑川ルリ子は、物語自体も彼女の演じたキャラクターも作品の中での役割もどれもこれも過去最高では?というくらい良かった。

個人的には実写版『あの花』のめんま役以来、ずっと余韻が残る存在感。

浜辺美波の演じる緑川ルリ子の醸す“昭和感”の一つのポイントはロングコートの着こなしになるのかなと思う。原作の仮面ライダーと同時代に東映で映画化された『女囚さそり』シリーズの梶芽衣子のトレードマークへのオマージュを感じさせる。

この浜辺美波を映画に残しただけでも評価に値する作品。