儚さが胸を締め付ける〜『花喰幻燈機』

三浦靖冬(正しくは三浦蘘冬)の三冊目の単行本『花喰幻燈機』は、コミック快楽天の掲載作品を中心に集められた作品集。本来は読みきりの作品を集めたものだと思われるが、まるで連作集のような統一感のある世界を見せてくれる。

どの作品にも少女あるいは少女型のアンドロイドが登場するのだが、ほとんど個人が救わそうにない世界、そこから逃げ出すことのできない閉塞感、そこで無力感を感じつつも逃げずに生き続ける登場人物…といった場面が淡々と描かれる。昭和初期を思わせるノスタルジックな背景に、黒髪・小柄・色白・眼鏡・童顔と「萌え」要素を備えていながらも精神面での脆さをどことなく感じさせる少女が登場する。ストーリの中には「18歳未満禁止」的な場面も含まれるが、全体を通して描かれるのは、人間の儚さといったものだ。

どの話も物悲しい展開が多く、読むたびに鬱々としてしまうのだが、丁寧に書き込まれた絵は何度でも再読に堪える。いや、むしろ何度でも再読したくなるというべきだろう。

締め付けられた胸をどうすればいいのか。この読後感を他の人にも知って欲しいという気持ちもある一方で、親しい人にはこんな切なさを味わって欲しくないという気持ちもある。

いずれにしても、三浦靖冬はいま一番気になる漫画家の一人だ。

花喰幻燈機

花喰幻燈機