- 作者: 阿部和重
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/02/01
- メディア: 単行本
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第132回芥川賞を受賞した阿部和重『グランドフィナーレ』を読んだ。
ロリータコンプレックスの趣味が妻にばれて離婚され、愛しい一人娘に会うことができなくなった失意の三十男が主人公。周囲の人間から罵倒、中傷、軽蔑されて故郷に帰り、旧友の紹介により地元の小学生を相手に演劇の指導をすることになる。そこで二人の美少女に出会い…、という話。
情けない人間を描写しているところはそれなりに面白く読めるが、スリリングな展開を期待していると肩透かしを喰う。愛娘や二人の少女に対する描写にも愛情や執着はそれほど感じられず、真性ロリータコンプレックスであった(と思われる)川端康成のようなフェティッシュな少女描写は皆無。結局「30代の孤独なロリコン男」というマスメディア受けのする設定を弄んでいるに過ぎないのではないかと思わざるを得ない。
(以下やんわりと書いているものの、若干のネタバレを含みます)
雑誌で「奈良の小学生殺人事件を予見した」などとして作者が取り上げられているのを見るに、それなりに現在の世相を反映したリアリティのある人物設定だと思うのだが*1、その設定から新たな文学的な地平を拓くまでに至っていない。個人的には、娘と会えなくなって抜け殻のようになった主人公が更正を誓うものの、そこで出会った二人の少女の魅力に抗いきれず、再び道を踏み外し…のようなダークな展開に期待していたが、ラストはいかにも中途半端だった。
堕ちていくところに人間がいて、そこに文学がある、と思うのだが。☆☆(5点満点)
*1:ただし、この小説とあの事件との間には、ほとんど具体的な共通点を見出せない