「木曜日のサバラン」その後―『君曜日』中村明日美子

これは、明るい方の中村明日美子

『鉄道少女漫画』の刊行から約2年。「木曜日のサバラン」のアコと小平の話が一冊のコミックになった。ケーキ屋の奥にある鉄道模型を舞台とした話(と書いてもどうにもわかりにくい)。

年上の男性に淡い恋心を抱く主人公の少女・アコと、身近にいて彼女に思いを寄せる同学年の少年。こうした設定は少女漫画の王道ではあるけれども、中村明日美子の描く世界は、「キャラ設定」とか「予定調和」とは無縁。非常にデリケートな描写を積み重ねていくことで、アコの世界を生き生きとしたリアルなものとして見せてくれる。

さて、アコの恋の行方はどうなるのか。ここで、明るい方の中村明日美子は、けっしてドロドロとした世界を見せることはしない。多少の皮肉や風刺が見え隠れはするけれども、「世の中、こんな風になればいいのに」と思わせる方向に、人間関係が動いていく。

スピンアウトものとしては、一応これで一区切りなのではないかと思わせる。サブタイトルに「鉄道少女漫画2」と銘打たれてはいるが、前作を読んでいなくても、ストーリーは十分に追えると思う。というか、鉄道の出番はそれほどは多くない。この作品集の中では、むしろセーラー服の方が物語の重要な鍵を握っているのではないかと思う(セーラー服との対比で引き立て役になっているジャンスカの方が個人的には好きだけれども)。

ところで、アコにとっての「君曜日」は、結局、何曜日なんだろうか。

君曜日 ─鉄道少女漫画2─

君曜日 ─鉄道少女漫画2─