ライブドア堀江社長の功績=時間外取引という盲点

ライブドアによるニッポン放送株の取得の方法がようやく問題視されてきた。

2月8日の日記

2005-02-08 - Sharpのアンシャープ日記

の5.に書いた通り、あのように短期間に大量の株式を取得するのであれば、公開買い付け(TOB)によらなければならない、というのが証券取引法の精神だと思う。

今回、ライブドア、ならびに取引をアレンジしたと言われるリーマンブラザーズ証券は、証券取引所の「時間外取引(東証であればTOSTNET)」を利用することによって、市場内でありながら事実上の相対取引として大量の買い付けを行っている。

この取引の適法性について、ようやくメディアでも議論が取り上げられるようになったが、個人的には限りなく黒に近いグレーだと考える。たとえ形式要件で違法であると認定されなかったとしても、証券取引所に事前に相談することなく法の網目をくぐるような方法でニッポン放送の株式を取得したライブドアの企業倫理、法令順守の精神が厳しく問われることは免れないだろう。

2月8日以降の金融当局や証券取引所の反応を見る限り、今回ライブドアが通ったような「抜け道」は遠からずしっかりとふさがれることは間違いない。この抜け道が存在する限り、公開買い付け制度は、有名無実になりかねないからだ。

いずれにしても、今回の一件は、制度の歪みを探し出してウルトラCの奇策を採ることは、経済的には合理性があっても、その外の部分で大きなコストになりかねないことを如実に示したともいえる。レピュテーションリスク(評判リスク)の金銭的価値を見積もった場合、今回のライブドアが行ったニッポン放送株への投資の価値がネットでプラスになるかどうかは、極めて疑わしいと思われる。

ライブドアの株価はすでに下落を始めていて、リーマンブラザーズ証券が引き受けた下方修正条項付きCB(転換社債)の株式への転換が進めば、一層の下落が懸念される。フットワークの軽さは起業家の持つべき資質なのかもしれないが、今回ようなケースでは、資本市場を相手にするときには、また外資系の金融機関の提案に乗るときには、軽すぎるフットワークによって致命傷を被るリスクを慎重に検討すべきでなかったかと思われる。

まあ、こうした教訓を世に知らしめたというのが、堀江社長の目下のところの「功績」だと言えるのではないか。