日興の上場を維持した東証の判断は妥当か

山一証券が自主廃業した際の社会的混乱は、金融関係者のトラウマになっている。東証も例外ではないのだろう。上場廃止をきっかけに日興証券に「万が一」のことが起きた場合、東証は非難を免れないからだ。それが怖くて、東証は日興の上場を維持したのだ。

しかし、一般的には、証券取引所は「政治的な配慮」を行うべきではない。求められるのは、投資家にとって、また発行体にとっての「公平性」だ。ライブドア上場廃止にしておいて、日興証券には「改善報告書」とは、「身内に甘い」と言われても仕方がない。

日興株の上場維持を決定・東証「不正会計、組織的といえず」

 東京証券取引所は12日、不正な利益水増しが発覚した日興コーディアルグループの株式上場を維持すると発表した。記者会見した西室泰三社長は「(不正会計が)組織的、意図的とまではいえない」と述べ、不正の影響が重大な場合に上場を認めない東証の上場廃止基準には該当しないと判断した。日興をTOB(株式公開買い付け)で子会社化することを決めた米金融大手のシティグループは上場維持でもTOBの方針を変えない考えで、日興はシティの支援で経営立て直しをめざす。

 不正会計が発覚した昨年12月以降、日興株は上場廃止の恐れがあることを投資家に周知させる「監理ポスト」に割り当てられていた。東証は上場維持決定を受け、13日付で監理ポストの割り当てを解除する。

 日興が金融庁から課徴金の納付を命じられた点については、東証は12日に日興に対して注意勧告を実施。情報を適切に開示するための体制づくりに向け、26日までに改善報告書を提出することを求めた。
日本経済新聞