少女歌劇団ミモザーヌ「Love Letter~いまもりまなか卒団公演~」@ YES THEATER

少女歌劇団ミモザーヌの団長いまもりまなかの卒団公演。

昨年末の東京銀座博品館劇場から、年始の大阪YES THEATERへと会場を移した。

ミモザーヌのホームとも言えるこの場所で、いよいよラストとなる公演。

第1幕

1.Proud Mary

ミモザーヌは次のステージへ入った」という確信をもたらす楽曲。
スローでじっくりと聞かせる冒頭部分から徐々にヒートアップしていき、途中でテンポが上がるとステージと客席が一気に熱を帯びる。
まさに「カンパニー」としての少女歌劇団ミモザーヌの魅力が爆発。
東京公演で手ごたえを得た様子で、メンバーも観客も一緒に楽しんでいることを実感できる。

2.ストレンジャーpart5

ミモザーヌの公演では定番となった、物語の導入を担う「ストレンジャー」。
今回は夏公演に続いて、いわむらゆきね、ちばひなの、しろみゆのトリオが登場。
ピアノ+ドラムンベースのしっとりとした伴奏に乗せて、真っ赤なスパンコールドレスをまとったメンバー3人が「これから始まる物語」をほのめかすように語って歌う。
「Proud Mary」のコンサート会場の雰囲気から、ミュージカルの劇場の雰囲気へ。

3.愛の賛歌

今回の公演のテーマは「Love Letter」。「愛」を形にして伝えるということ。
物語を貫く通奏低音のように、越路吹雪の「愛の賛歌」のフレーズが奏でられる。
夏公演でも黒天使を演じたともだりのあが黒のゴシックな衣装で登場し「愛の賛歌」を高らかに歌う。
ステージの上に一人で立つだけで、この世界を支配しているかのような存在感。

4.桜の花を

「100年先の桜の花を あなたと見たい」
「愛」という抽象的な概念を身の回りにある言葉にすれならば、この歌詞にあるような表現になるのかもしれない。
夏公演で少女たちが善と悪の間を彷徨った末にたどり着いた境地。
今回もいわむらゆきねが透き通った声のソロで聞かせる。

5.真冬のLOVE LETTER

胸が苦しくなるほどに誰かのことを思っているのに、それを伝えることを躊躇する少女。
自身の中の想いを手紙という形にしていく姿を、いまもりまなかが表現する。
エレピのシンプルな伴奏が浮かび上がらせるのは、嘘偽りのない自分の心の中の声。
いまもまなかの澄んだ歌声は、少女の純粋さを象徴しているかのうように響く。
彼女自身から家族・メンバー・スタッフ・ファンへのメッセージと重なるように聞こえてくるのは、ファンの身勝手だろうか。

6.されど空の深さは

いわゆる「不良グループ」のテーマソングとして夏公演で披露された楽曲で、ストリート感あふれるR&Bのダンスナンバー。
夏公演では、テンションコードを効かせたボーカルをすずきみあいが熱演したが、今回はしものあやめが踏襲するというサプライズ。
お互いの信念をぶつけ合う殴り合いからの和解という展開の中で、ミモザーヌでは初となる「殺陣」を取り入れたダンスも披露。
「少女歌劇団」というジャンルを超えるような迫力ある舞台に改めて驚かされる。

7.群青

少女が内に秘めている情熱を、フラメンコ舞踊で発露していくラテン歌謡的な楽曲。
夏公演に続いていまもりまなかに寄り添うようなちばひなののダンスと演技が見どころ。
最近の公演でフラメンコの表現にますます磨きがかかってきた二人だが、周りを固めるメンバーからも目が離せない。
特におかべはなこ、かとうさや、こじまさいかの4期生の堂々とした演技が頼もしい。

8.愛はエゴイスト

夏公演では、悩める少女の背中を押す形で人間にかかわった妖精。
今回の冬公演では、その報いとして寿命を迎えることになってしまった。
天使や妖精から見れば、人間はとても短い時間を刹那的に生きているように見える。
だが、少女が誰かに「愛」を伝えることを手助けすることによって、妖精は自らも心を満たされてこの世を去っていく。
難しい妖精役を今回もみやはらにこが好演し、いまもりまなかとの二重唱で感動を与えてくれる。
たなかあかり、すずきよりほの妖精も、アクロバットが見事なだけでなく、パントマイムでの演技が見事だった。

9.真夏の夜の夢

少女は愛を伝え、妖精はそれを見届けて絶命する。
そんないきさつを高みから見ていた黒天使は、この世を去った妖精の魂を「毎年春に咲く花」へと変える。
長い時間の中では、「愛」は刹那的なものだが、同時に「永遠」にもなりえる。
この世界では、いつでも誰かが誰かを愛している。
その営みは、100年前も100年先も、いままでもこれからも、ずっと続いていくだろう。

10.冬の物語

「愛」を伝えたいという少女の想いは、その想いを伝えたかった相手にしっかりと届いた。
何度も彷徨いながら、ついに立つべき場所に立ち、進むべき道を歩き始めた少女。
ここから大人になって自らの道を切り開いていくのだろう。

力強い決意を感じさせるいまもりまなかのソロでこの物語は幕を閉じる。
ここから先、彼女を育んだ「少女歌劇団」と違う場所で、また新しい物語が始まっていくであろうという確信とともに。

第2幕

ここからはバラエティ・ショウ。

11.とらとら

これまでの公演では「若手」のイメージが強いとらとら。
今回は、たかやあんなとちばひなのという一期生コンビが虎に乗って登場。
続いて、しろみゆ、ともだりのあ、しものあやめ、みやはらにこの2期生が応援に駆け付ける。
場の盛り上げはさすが一期生・二期生という安定感。

12.木遣りくずし

いわむらゆきねのイメージの強い「和装・民謡・日本舞踊」の楽曲だが、今回はいまもりまなかが初挑戦。
日本舞踊のイメージがなかっただけに着物姿で登場した瞬間に驚かされる。
が、持ち前の凛々しさを武器にして、美しい所作で完璧なパフォーマンス。
最後の最後まで「やっていないことに挑戦する」という彼女のその心意気が素晴らしい。

13.Swanee

前回は卒団したたかはしまおがソロで歌ったナンバーを今回はすずきみあいのソロで。
たかはしまおの方は譜面に忠実で端正な歌唱だったが、すずみみあいの方はジャジーでソウルフルで熱いパフォーマンス。
同じ楽曲でも歌う人・演じる人によって個性を形にできるというのがミモザーヌの強み。

14.冬のペンギン

フレッシュなメンバーが歌い継いできた「夏のペンギン」を、今回はコミカルな歌詞に入れ替えた「冬のペンギン」。
寒そうなしぐさで登場するしものあやめのソロから始まり、コメディもできる彼女のキャラクターで会場が盛り上がる。
1期生・2期生をはじめとする先輩たちの「よちよちペンギン」の姿も思いがけずフレッシュで、会場と観客が一体となる。

15.ファンタジーガール

ピンクの衣装にテクノポップ歌謡な楽曲を5人のグループのフォーメーションで魅せるアイドル的な楽曲。
毎回見たくなるくらいのミモザーヌの定番名曲になってほしいし、いろいろな人に登場して欲しいくらい。
今回はまさかのいまもりまなかセンター。
「いままでミモザーヌではやれなかったアイドルっぽい楽曲もやりたい」と自ら希望したそうだけど、”アイドルいまもりまなか”強すぎ。
機械仕掛けの人形のようなダンスのたかやあんな、メロディにかえて台詞を発するさかもとりるはなど見どころが多く、ステージを見る”目”の数が足りないと感じるほど。

16.イヨマンテの夜

夏公演で「真っ赤な太陽」を熱唱したすずみみあい・しろみゆのコンビが披露するのは「イヨマンテの夜」。
パワフルなボーカルにくわえて土着的な泥臭い表現力も必要とする難曲を、十代の少女たちが完全に自らのものにしている。
凄い。語彙力がないが、これは見るべき、聴くべき、驚くべき。
個人的には今回の冬公演のカバーソングの中でも白眉。

17.夜来香

過去の公演でもいまもりまなかが歌ってきた「夜来香」。
青のチャイナドレスを艶やかに着こなし、日本語中国語の両方で伸びやかなボーカルを聞かせる。
まるで上海の夜に空間移動したかのような異国情緒。
今回はバックダンサーなしの完全ソロで、一人でステージに立って劇場の空気を完全に支配する姿は、今後の活動の成功を確信させるオーラを帯びていた。

18.少女A

「少女から大人へ」という成長の中で、不安に揺れ動く内面を描く「少女A」。
思春期特有の「強がり」と「壊れそうなもろさ」を行き来する繊細さを、いわむらゆきねとともだりのあの二人が表現。
「私は私よ 関係ないわ」という心の叫びが真に迫って聞こえてくる。

19.渚のシンドバッド

昭和の時代に老若男女を問わず国民的人気を得ていたピンクレディー
楽曲の展開の予想できないところ、歌詞のキャチーなところは、今の時代でも改めて新鮮だなと思う。
サビで急にギターロック調になって「セクシー、あなたはセクシー」というめまぐるしさ。
そんな楽曲を令和の今楽しめるというのもミモザーヌの魅力の一面。

20.ギフト

ミモザーヌのオリジナル曲。
「これから旅立つ世界に わたしが贈る希望の花束 ギフト」という歌詞を、いまもりまなかと一期生が歌い上げる。
大阪公演では、メンバーが涙を浮かべ、声を震わせながらパフォーマンスする姿が印象的。
彼女たちが一緒に過ごしてきた長い時間を想像し、その結果生まれた絆を目の当たりにして、見る者にも熱いものがこみあげてくるのを止められない。

21.応援歌

「春は キミのため 春は すぐそこに」
卒団するメンバーを送り出すのにこれほどふさわしい曲はない。
いよいよ別れの時が訪れたという実感に包まれていく。
ステージの上のメンバーが涙をこらえてこの曲をいまもりまなかに歌うとき、客席にいる私たちの心の中も同じ想いを奏でているのだ。

アンコール

22.ラストダンス

過去にきくたまこと・すずきみあいのペアで観て「これは唯一無二!」と唸らされたR&Bナンバー。
きくたまこと卒団とともに事実上封印されたのかと思っていたが、まさかのサプライズでいまもりまなか・すずきみあいのペアでアンコール披露。
帽子を意気にかぶって、ジャケットプレイを見せるいまもりまなかの”男役”としての美しさが光る。

23.東京ブギウギ

今シーズンのNHKの朝ドラ『ブギウギ』は笠置シヅ子をモデルにしたヒロインが主人公。
彼女の出自でもある少女歌劇団にスポットライトが当たったりしているけれども、「東京ブギウギ」はこの公演の時点ではまだ登場していない。
ということで、一足先にドラマの展開を先取りする形で少女歌劇団ミモザーヌによる「東京ブギウギ」。
自然に笑顔になれる楽曲。

24.さよならの向こう側

いまもりまなかが最後に歌うソロ曲は、伝説となった昭和のビッグスター・山口百恵の引退コンサートで最後に歌われた楽曲。
「Thank you for your love」の歌詞は、4年に及ぶ少女歌劇団ミモザーヌでの活動を終えるいま、いまもりまなかが多くの人に伝えたい言葉でもあるだろう。
スモークにつつまれる彼女の姿は「やり切った」姿ならではの尊さがあり、5年間在籍した「少女歌劇団」の世界から旅立っていくにあたり、残像と余韻を残してくれちているようにも見える。
神々しいというほかない。

25.ミモザのように

そしてアンコールの最後は、ミモザーヌ全員による団歌「ミモザのように」。
「素敵な時代引き寄せて 明るい明日にきっとなるはずだから」という歌詞のように、明るい明日はきっとくる。
少女たちの祈りにも似た想いが形作る公演はこれで幕を閉じる。
ミモザーヌでの5年間の活動をまっとうして少女から大人の世界へと羽ばたいていったいまもりまなかに祝福を。
新体制で団長となるいわむらゆきね、副団長となるちばひなの・しものあやめに期待を。

少女歌劇団ミモザーヌの世界がこれからも続いていくよう、そしてさらに多くの人がそれを楽しめる未来が訪れるよう、心から願う。
こんなに心を豊かにしてくれる公演を見せてくれるカンパニーは他にはなかなかないのだから。