少女から大人になる~少女歌劇団ミモザーヌ「Love Letter~いまもりまなか卒団公演~」@銀座博品館劇場

少女歌劇団ミモザーヌの団員は二十歳で卒団する。

団長を務めるいまもりまなかは今年7月に二十歳の誕生日を迎え、この冬公演が卒団公演となる。

東京での公演は銀座博品館劇場で12月23日・24日の二日間にわたって開催された。

夏公演では、「善と悪」「白と黒」「光と影」の間で揺れ動く少女の物語を見せてくれた。

今回の冬公演は、その夏公演の物語のテーマを改めてなぞっていくような構成となっている。

ひと夏で成長した少女がいよいよ大人になっていく。

第1幕

1.Proud Mary

夏公演で「ミモザーヌは次のステージへ入った」という確信をもたらしてくれた楽曲。
スローでじっくりと聞かせる冒頭部分から徐々にヒートアップしていき、途中でテンポが上がるとステージと客席が一気に熱を帯びる。
まさに「カンパニー」としての少女歌劇団ミモザーヌの魅力が爆発。

2.ストレンジャーpart5

ピアノ+ドラムンベースのしっとりとした伴奏に乗せて、真っ赤なスパンコールドレスをまとったメンバー3人が「これから始まる物語」をほのめかすように語って歌う。
今回は夏公演に続いて、いわむらゆきね、ちばひなの、しろみゆのトリオが登場。

3.愛の賛歌

今回のテーマは「Love Letter」。

すなわち「愛」を形にして伝えるということ。

物語を貫く通奏低音のように、越路吹雪の「愛の賛歌」のフレーズが奏でられる。

夏公演でも黒天使を演じたともだりのあが、まるでこの世界を支配する女王のように登場し「愛の賛歌」を高らかに歌う。

4.桜の花を

「100年先の桜の花を あなたと見たい」

愛という概念を身の回りにある言葉にすれば、この歌詞にあるような表現になるのかもしれない。

夏公演で少女たちが善と悪の間を彷徨った末にたどり着いた境地。

いわむらゆきねがソロで聞かせる。

5.真冬のLOVE LETTER

胸が苦しくなるほどに誰かのことを思っているのに、それを伝えることを躊躇する少女。
そんな想いを手紙という形にしていく姿を、いまもりまなかが歌い上げる。
彼女の澄んだ声は少女の純粋さを象徴しているかのうよう。

6.されど空の深さは

いわゆる「不良グループ」のテーマソングとして夏公演で披露された楽曲で、ストリート感あふれるR&Bのダンスナンバー。
夏公演では、テンションコードを効かせたボーカルをすずきみあいが熱演したが、今回はしものあやめが踏襲するというサプライズ。
殴り合いからの和解というエモーショナルな展開の中で、ミモザーヌ初の「殺陣」を披露。
「少女歌劇団」というジャンルを超えるような迫力に驚かされる。

7.群青

少女が内に秘めている情熱を、フラメンコ舞踊で発露していくラテン歌謡的な楽曲。
いまもりまなかに寄り添うようなちばひなののダンスと演技が見どころだが、周りを固めるメンバーの息の合ったダンスからも目が離せない。
おかべはなこ、かとうさや、こじまさいかの4期生の成長が著しいと実感するナンバー。

8.愛はエゴイスト

夏公演では、悩める少女の背中を押す形で人間にかかわった妖精。
今回の冬公演では、その報いとして寿命を迎えることになってしまった。
天使や妖精から見れば、とても短い時間を刹那的に生きているように見えるのが人間。
だが、少女が誰かに「愛」を伝えることを手助けすることによって、妖精は自らも心を満たされてこの世を去っていく。
難しい妖精役を今回もみやはらにこが好演。

9.真夏の夜の夢

黒天使が現れ、この世を去った妖精の魂を「毎年春に咲く花」へと変える。
長い時間の中では、「愛」は刹那的なものだが、同時に「永遠」にもなりえる。
この世界では、いつでも誰かが誰かを愛している。
その営みは、いままでもこれからもずっと続いていくだろう。

10.冬の物語

「愛」を伝えたいという少女の想いは、命と引き換えに背中を押した妖精のおかげもあって意中の相手に届く。
彷徨いながらも、立つべき場所に立ち、進むべき道を歩き始めた少女。
ここから大人になって自らの道を切り開いていくのだろう。

そんな力強さを感じさせるいまもりまなかのソロでこの物語は幕を閉じる。
ここから先は「少女歌劇団」とは違う場所でしっかりと続いていくであろうという確信とともに。

第2幕

ここからは、第1幕とは違ってバラエティ・ショウへ。

11.とらとら

「若手」のイメージが強いとらとら。
今回は、たかやあんなとちばひなのという一期生コンビが虎に乗って登場。
続いて、しろみゆ、ともだりのあ、しものあやめ、みやはらにこの2期生が応援に駆け付ける。
場の盛り上げはさすが一期生・二期生という安定感。

12.木遣りくずし

いわむらゆきねのイメージの強い「和装・民謡・日本舞踊」の楽曲だが、今回はいまもりまなかが初挑戦。
本人も言っていたが、彼女に日本舞踊のイメージがなかっただけに着物姿で登場した瞬間に驚かされた。
パフォーマンスも完璧で、卒団公演でレパートリーを広げてくる心意気に感動。

13.Swanee

前回は卒団したたかはしまおがソロで歌ったナンバーを今回はすずきみあいのソロで。
たかはしまおの方は譜面に忠実で端正な歌唱だったが、すずみみあいの方はジャジーでときにソウルフルで熱いパフォーマンス。
同じ楽曲を同じ歌劇団で披露しても、歌う人によってこうまで変わってくるのかと感心させられる。
それぞれの個性を形にできるのがミモザーヌの強みだといってもいいだろう。

14.冬のペンギン

フレッシュなメンバーが歌い継いできた「夏のペンギン」を、コミカルな歌詞に入れ替えた「冬のペンギン」。
寒そうなしぐさで登場するしものあやめのソロから始まるが、コメディもできる彼女の魅力が爆発。
1期生・2期生をはじめとする先輩たちの「よちよちペンギン」の姿も、思いがけずフレッシュで楽しめる。

15.ファンタジーガール

ピンクの衣装にテクノポップ歌謡な楽曲を5人のグループのフォーメーションで魅せるアイドル的な楽曲。
毎回見たくなるくらいのミモザーヌの定番名曲になってほしいと思っているけれども、今回はまさかのいまもりまなかセンター。
「いままでミモザーヌではやれなかったアイドルっぽい楽曲もやりたい」と自ら希望したそうだけど、アイドルいまもりまなか強すぎ。
今回が見納めになってしまうのが惜しいくらいのかわいさが溢れている。

16.イヨマンテの夜

夏公演で「真っ赤な太陽」を熱唱したすずみみあい・しろみゆのコンビが、今回披露するのは「イヨマンテの夜」。
パワフルなボーカルにくわえて土着的な泥臭い表現力も必要とするこの難曲を、本当に十代の少女たちが歌えるのだろうかと思ったが、最初の歌い出しでそんな心配は杞憂に終わった。
凄い。
これは見るべき、聴くべき、驚くべき。
個人的には今回の冬公演のカバーソングの中でも白眉だと思う。

17.夜来香

過去の公演でもいまもりまなかが歌ってきた「夜来香」。
青のチャイナドレスを艶やかに着こなし、日本語中国語の両方で伸びやかなボーカルを聞かせる。
しかも、今回はバックダンサーなしの完全ソロ。
一人でステージに立って劇場の空気を完全に支配するその姿は、今後の活動の成功を確信させるオーラを帯びていた。

18.少女A

成長の中で揺れ動きながらも強がりを見せる少女の内面を描いた「少女A」。
思春期特有の繊細さをいわむらゆきねとともだりのあの二人が表現する。
「私は私よ 関係ないわ」という心の叫びが聞こえてくるような迫力だった。

19.渚のシンドバッド

昭和の時代に老若男女を問わず人気を得ていたピンクレディー
いま改めて聞くと、楽曲の展開の面白さや、歌詞のキャチーなところが、何周か回って新鮮でもあるなと思う。
急にロック調になって「セクシー、あなたはセクシー」とか面白すぎる。
そんな楽曲を令和の今楽しめるというのもミモザーヌの魅力の一面だと思う。

20.ギフト

ミモザーヌのオリジナル曲。
「これから旅立つ世界に わたしが贈る希望の花束 ギフト」という歌詞を、いまもりまなかと一期生が歌い上げる。
彼女たちが一緒に過ごしてきた長い時間を想像し、その結果生まれた絆を目の当たりにして、見る者にも熱いものがこみあげてくるのを止められない。

21.応援歌

「春は キミのため 春は すぐそこに」
卒団するメンバーを送り出すのにこれほどふさわしい曲はない。
ステージの上のメンバーがいまもりまなかに歌うとき、客席にいる私たちの心の中も同じ想いを奏でているのだ。

アンコール

22.ラストダンス

過去にきくたまこと・すずきみあいのペアで観て「これは唯一無二!」と唸らされたナンバー。
きくたまことの卒団とともに事実上封印されてしまったのかと思っていたが、まさかのサプライズでいまもりまなか・すずきみあいのペアでアンコール披露。
帽子を意気にかぶって、ジャケットプレイを見せるいまもりまなかの”男役”としての美しさが光る。

23.東京ブギウギ

今シーズンのNHKの朝の連続ドラマ『ブギウギ』は笠置シヅ子をモデルにしたヒロインが主人公。
彼女の出自でもある少女歌劇団にスポットライトが当たったりしているけれども、「東京ブギウギ」が劇中で歌われるのはこれからになるだろう。
ということで、一足先にドラマの展開を先取りする形で少女歌劇団ミモザーヌによる「東京ブギウギ」を楽しんだ。
自然に笑顔になれる楽曲。

24.さよならの向こう側

いまもりまなかが最後に歌うソロ曲は、いまや伝説となった昭和のビッグスター・山口百恵の引退コンサートで最後に歌われた楽曲。
「Thank you for your love」の歌詞は、4年に及ぶ少女歌劇団ミモザーヌでの活動を終えるいま、いまもりまなかが多くの人に伝えたい言葉でもあるだろう。

25.ミモザのように

アンコールのしめくくりは、全員でいつものように「ミモザのように」。
「素敵な時代引き寄せて 明るい明日にきっとなるはずだから」という歌詞のように、明るい明日はきっとくる。

そんな少女たちの祈りにも似た想いが形作る公演を見せてくれるミモザ―ヌには今回も感謝しかない。
今回、ミモザーヌでの4年間の活動をまっとうして少女から大人の世界へと羽ばたいていくいまもりまなかに祝福を。

そいて、ミモザーヌの新体制で団長となるいわむらゆきね、副団長となるちばひなの・しものあやめが、新しい劇団の姿を見せていってくれることに期待したい。

まだ観てない方、2024年1月6日・7日に大阪公演もあるのでぜひ。