少女歌劇団ミモザーヌ夏公演「Traveling Summer」@東大阪市文化創造館

前回の冬公演できくたまことが卒団した少女歌劇団ミモザーヌ。

第4期生を迎え、いまもりまなかを新団長とする新体制でのお披露目となった「Traveling Summer」の大阪公演。

結論からいうと、想像を超えるレベルアップを見せてくれるものだった。


第一幕

1. Welcome Review

これまでのミモザーヌのオープニングは、特別感はありながらも、どこか手作り感というか小劇場的なこじんまりとした雰囲気があり、それはそれで親しみやすさや距離の近さを感じさせてくれた。

しかし今回は違う。

豪華絢爛。

圧倒されるような迫力。

まるで宝塚のレビューのような華やかさ。

さまざまな衣装に身を包んだメンバーがステージに次から次へと登場し、息つく暇もないほど。

クライマックには眩しいスポットを浴びていまもりまなかとともだりのあが並んで階段から降りてくる。

まるで宝塚のように。

非日常に世界に一気に引き込まれる。

2. ストレンジャー

真っ赤なスパンコールのワンピースで登場する3人のメンバーが繰り出すジャズナンバー。

「これからショウが始まる」という高揚感を高めてくれる。

ボーカルの要になるのはたかはしまお。

そして美しさに磨きのかかったちばひなの。

3期生からの大抜擢ひろせしずく。

ひろせしずくはこの半年で背も足もぐっと伸びたような印象だが、何よりふっと大人っぽい表情を見せるようになったのに驚かされる。

3.希望という名の旅へ

物語はニューヨークの裏通りから始まる。

貧しい少年と少女が食べものを探す場面。

きっと当て書きであろう少年ビリーを演じるすずきみあい、そして少女アリエルを演じるいわむらゆきね。

「少女歌劇」というよりも、本格ミュージカルを見ているかのような抜群の演技力に引き込まれる。

そして、お腹を空かせた二人は、パンではなく空想の旅で自らを見たそうとするという絶妙の導入で「世界旅行」へ。

4. Take a "A" train

スタンダードなジャズのナンバーだが、完全にミモザーヌ色で染められている。

NYの裏通りの少年少女の空想は、少しずつ華やかな色をまとい、豊かな音楽で彩られて形になっていく。

楽しく踊って、賑やかに歌って、旅の前の高揚感がクライマックスに達する。

大勢のメンバーが出演するナンバーだが、驚いたのは個々のメンバーが存在感を増していること。

特に一期生のいしばしゆあ、たかやあんなの堂々としたパフォーマンスに目を奪われる。

誰も「バックダンサー」はいなくて、みんな一人一人が主役のような輝き。

そんな輝きを放つまでに全員が成長したミモザーヌメンバーを見ることは驚きでもあった。

5. ボン・ボヤージュ

旅はアメリカ西海岸の港から大西洋に向かっていく。

舞台を二階建てにしたことで演出の幅がぐっと広がっていて、前景ではNYの少年少女二人が夢見ている、その後ろの二階で夢の中の景色を少しずつ姿を現していく。

大西洋を横断する豪華客船だろうか。

大きな帽子やスカーフを身にまとった乗船客たち。

素敵なレディたちの中で、ウェルカムドリンクを勧めにくる水兵スタイルのたなかあかり。

バレリーナのような連続ターンを見事に決めていて、また彼女の新しい魅力に気付かされる。

3期生もすっかり舞台で存在感を示すようになっていて感動。

6. エスペラ・フラメンコ

大西洋を横断して、欧州の旅はまずスペインから。

黒ずくめのクールなスーツで男装したいまもりまなかをセンターにして、情熱的な真っ赤なドレスの女性陣が囲むようにして踊るフラメンコ。

リズムも本格的なポリリズム変拍子で、こんな難しい拍を揃ってしかもエモーショナルに演じる姿に圧倒される。

なかでも、ちばひなのの身につけているタイトなワンピースが彼女の美しいボディラインを浮かび上がらせる。

去年はまだ幼さを残していた彼女が、今はすっかり「美人」の域に達しているのを目の当たりにして、つくづく少女の成長は早いと実感させられる。

クロバットを武器にしたみやはらにこのパフォーマンスも楽しめ、今回の公演での目玉の一つ。

7.愛するナポリタン

お次はイタリアへ渡り、カンツォーネ要素が入った遊び心のある歌詞のポップスへ。

たかはしまおの歌唱力、表現力を軸にして、恋多きイタリアの人々の日常をも感じさせる一曲。

国境を越えると、曲も、衣装も、メンバーも変わって、本当に旅をしているよう。

8.パリの雨

そして今度はフランスへ。

アンブレラを使った演出は、まるでミュージカルのように華やかで、そして粋。

雨に濡れても楽しさを見つけられる。

そして雨が止んだ後の喜びを感じられる。

前回はかわいい猫を演じていたともだりのあだったが、今回は雨上がりの路地に猫を見つける演技で、そこにはいないはずの猫の姿をしっかりと感じさせてくれる。

ともだりのあの表現力はさらに磨きがかかっていて、まるでミュージカル映画のワンシーンを見るよう。

9. アブダカダブラ

NYの少年少女の二人による台詞を挟み、旅路はヨーロッパから中東へと進んでいく。

これまでの公演でも披露されてきた「アブダカダブラ」。

ボーカルの主軸となるたかはしまお、アイソレーションが切れ味のあるちばひなの。

そしていしばしゆあ、たかやあんならの1期生に混じって俄然存在感を見せたのが、ショートカットにしたあんどうはな。

シュッとした立ち姿が美しく、ステージで映える存在になっていた。

10. 夜来香

旅の終わりは中国。おそらくは香港。

艶やかなチャイナドレスに身を包んだいまもりまなかが、ジャズアレンジの演奏に乗せて、日本語と中国語を駆使して堂々と歌う。

まるで幻想の中の舞台のような夢見心地。

その夢見心地な気分をさらに掻き立てるのが、左右で美しく舞うともだりのあとひろせしずくのペア。

チャイナ風味のあるモノトーンの衣装で二人のプロポーションの美しさが引き立つ。

こんな旅の時間がいつまでも続いてくれればいいのに・・・と思う。

11. 希望の光は/明るい未来

旅は終わり、ビリーとアリエルの二人は現実に戻ってくる。

お腹は満たされなくとも、心は豊かになり、将来への希望が持てるようになる。

と、ここで終わらないのがこの物語の素敵なところ。

想像していなかったサプライズが、二人に幸せを運んでくる。

すずきみあいといわむらゆきねのダンス、そして二重唱は、この第一幕のクライマックスに相応しい高い次元に達していて、思わず泣きそうになる。

「少女歌劇団」という言葉からは想像できないようなプロのエンタメ。

拍手喝采の中、幕が降りて、見るものは余韻を味わいながら現実の中に引き戻される。

第二幕

12. とらとら

幕間のざわざわした空気から再び舞台と客席に一体感をもたらすのがこの「とらとら」。

前回まではいわなみゆうかの予測不能なユニークなキャラクターの個人芸的な色が強かったが、今回、彼女の不在を埋めたのは3期生のさかもとりるは。

おっとりした癒し系の雰囲気が強いと思っていた彼女だったが、太陽のような明るさが想像以上にとらとらに合っていた。

とらとらに続いては、吉本芸人とのバラエティコーナーで、大阪では昼がミルクボーイ、夜がアキナとの企画。

このコーナーでもメンバーの反射神経やお笑いセンスの向上が感じされて楽しいものになっていた。

13. 情熱フラミンゴ

個人的に大好きなナンバーの一つで、エモーショナルな楽曲に、片足ポーズのハードなダンス、そして情熱を表現した衣装が見所。


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今回は成長著しいちばひなのがセンターを務め、クールなパフォーマンスでまた新しい魅力を見せてくれた。

14. 夕陽に笑うシマウマ

動物シリーズの定番になってきた感のある「夕陽に笑うシマウマ」。

悩み事も吹き飛ぶような明るさを感じさせてくれるナンバー。

今回はすずきゆいが主軸となってその明るさを引っ張り、しものあやめやたぐちえみるが明るさを増幅していっているように見えた。

こうやって1期生がリードし、2期生がそれを受け取ってさらに発展させる。

そんなミモザーヌのメンバー間の交流が見えるような気がした。

15. 夏のペンギン

2期生みやはらにこ、3期生たなかあかりがリードし、今年3月に加入した4期生の5人が総出演。


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ライブアイドルのような楽曲で思わずコールを入れたくなる。

そして、なんと初々しいペンギン。

キャップのつばをくちばしに見立て、黒のジャケットの裾を尻尾に見立てる。

心が洗われるナンバーだが、しっかりと揃ったダンスあってこそ。

楽しそうな笑顔の裏で、4期生もハードな体幹レーニングを頑張っていることが窺える。

16. 愛の速度

津軽三味線の北村姉妹をゲストに迎え、コラボで「愛の速度」。

これは生演奏に肉薄するくらいの迫力、そしてライブ感。

この楽曲はアップテンポで、ダンスもこれ以上ないというくらいにキレッキレ。

サクラ大戦を知っている人には、これこそが令和のサクラ大戦だと伝えたい。

知らない人には、とにかく見て!とおすすめしたい。


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これは第一部の目玉が「エスペラ・フラメンコ」のフラメンコとすると、第二部の目玉がこれ。

いや、夏公演を通じて一番エモーショナルだと言えるかもしれない。

17. おてもやん

熊本県民謡のあの「おてもやん」。

パンフレットで曲名を見て「これは箸休め曲かな」と思ったが、全然そうではなかった。

北村姉妹の生演奏の津軽三味線に乗せて、浴衣で登場するメンバーが日本舞踊を舞う。

その美しいこと。

着物を崩さず、それでいて女性らしい艶やかさやかわいらしさを全面に出して魅了する。

いわむらゆきねのリードする民謡歌唱も堂に入っていて、まるで夏祭りのよう。

あんどうはな、しろみゆ、いでいゆき、さかもとりるは、それぞれも日本女性の美しさをそれぞれの個性で表現していて、全然箸休めどころではなく、もっとじっくり見たいという気持ちになった。

18. 20THセンチュリー・クリームソーダ

第一部がアメリカからユーラシアへの世界旅行なら、第二部はさながら日本の古今をめぐる時間旅行のよう。

この曲は昭和アイドル歌謡をオマージュしたような懐かしい楽曲世界に、令和ガールズの視点で新鮮さを感じるというもの。

ともだりのあセンターに、ちばひなの、ひろせしづくという、1期・2期・3期ユニット。

この辺の主力メンバーになるともはや期の違いは超えてくるという感じ。

それぞれの私服風の衣装も古き良き昭和を思い出させてくれてとてもよかった。

19. 今宵リバーサイドで

そろそろすずきみあいがリードを取るエモいダンスナンバーが見たい、と思っていた頃にドロップされる新曲。

ソウルフルな彼女のボーカルに、ストリートのパワーを感じさせるダンス。

メンバーはオーディションで選ばれた選抜メンバーでいしばしゆあ、たかやあんな、すずきゆい、もうりさくらといった1期生の精鋭に、みやはらにこ、しものあやめの2期生が加わる。

しものあやめは結構おもしろキャラっぽい雰囲気を見せてくれることが多いけれども、このナンバーでダンスの実力を改めて見る思い。

20. SUN Flower

新型コロナウィルスのせいでここ1、2年は思うような活動ができなかったこともあったろうミモザーヌ。

それは彼女たちだけではなく、エンタメ界全般にも言えることであるし、もっと言えば社会全体も同じような雲に包まれていると言える。

そんな雲の下で気分が滅入る日もあるけれども、明るい方を見て希望を失わずにいればいつかきっと・・・という思いが感じられるバラード。

いまもりまなか、いわむらゆきね、たかはしまお、ともだりのあの4人による凝縮されたパフォーマンスが胸を打つ。


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特にたかはしまおのボーカル。

高域まで気持ちよく伸びて、高域になるほど透明になるという奇跡の歌声。

これを聞くと公演もいよいよクライマックスという気分になる。

21. Shine

最後の曲はShine。

「輝く」という意味のこの楽曲の作曲は、なんとタケカワユキヒデ

作曲者の名前で曲の感想が変わるわけではないけれども、ゴダイゴを聞いて育ち、「天てれ」で少年少女が名曲をカバーする魅力を知った世代からすると、やはりタケカワユキヒデの名前は感慨ひとしお。

希望を感じる壮大な楽曲は、たかはしまお、いまもりまなか、すずきみあいの3人を主軸に全員が歌い、公演はフィナーレを迎える。

このあと、アンコールもあるが、これから東京公演を見るひとのためにネタバレせずに書かずにおこう。




前回の公演からすると、メンバー個々の成長が著しく、チームとしても「次のレベル」に到達している感がありあり。

特に、4期生が入ってまだ半年足らずという中で、新メンバーを育てながらも全体のレベルを引き上げて、フラメンコや日舞などの新しいことにも挑戦し、それを成功させるというのは並大抵ではできないと思う。

チーム作りの理想ではあるけれども、なかなかうまくいっている例を見たことがないので、正直いって驚かされた。


次回の公演は8月23日(火)の東京。大田区民プラザ。

次回といっても、今回の夏公演はこれが見納めになる。

これほどのクオリティの公演をしている少女歌劇団を他に知らない。

わざわざ大阪まで足を運ぶのは僕のようなコアな層(なんだそれ)だけかもしれないけれども、東京で見られるこの機会はぜひ多くの人にお勧めしたい。

絶対に後悔しないですから。