少女歌劇団ミモザーヌ冬公演「The journey continues〜旅はつづく〜」@東大阪市文化創造館

少女歌劇団ミモザーヌの冬公演は、今回は東京公演はなく、大阪のみ。

そして日程はクリスマス当日。

「The journey continues〜旅はつづく〜」というタイトルは、夏公演の旅が続いていくという<物語>を期待させた。


物語について

ニューヨークのハーレムのストリートで逞しく生きるビリーとアリエルの二人。

前回の夏公演では、貧さゆえに心が折れそうになるアリエルに、ビリーは「世界旅行」の夢を見せて希望をプレゼントした。

あれから5年。

月日は流れ、孤児院で働くアリエルのところに押し入った強盗。

その正体はなんとあの親友だったビリー。

彼はここでアリエルが働いているとも知らず、その日食べるものにも困ってのことだった。

この5年間が「夢を見る」という綺麗事だけではなかったというのは、強盗にまで身をやつしたビリーの姿を見れば明らかだ。

だが、それは5年間が絶望だけの期間だったということを意味するわけではない。

アリエルの方は、5年前彼に語った夢である「いつかリンゴの樹を植える」を実現していた。

そのリンゴはまだたくさんの実を結んではないけれども、アリエルはアップルパイを孤児たちに振る舞うまでに成長していた。

今度はアリエルがビリーを叱咤し、夢を見せる立場を演じることになる。

そう、前回の旅をなぞるように。

それは絶望に打ちひしがれたビリーの心を少しずつ開いていく。

思いがけない”クリスマスプレゼント”もあり、この公演はまさにクリスマス向けだと感じた。

年末に演じられるバレエの「くるみ割人形」のように・・・


思うに、<物語>はハッピーエンドを迎えて終わるが、人生という「旅」はそう簡単には終わりを迎えない。

また、「起承転結」という構成でまとまることもない。

いいときもあれば悪いときもある。

そんなことを教えくれ、勇気を与えてくれるような公演だった。

キャストについて

キャスティングについても簡単に触れておこう。

まず一期生。

いまもりまなか団長、たかはしまお副団長、そして芸達者なすずきみあい、いわむらゆきね、アイドル的な輝きのちばひなのらのコアメンバーの魅力はもちろん、いつの間にか二人目の副団長になっていたいしばしゆあ。彼女はSNSでのキャッチーに輝く存在だったが、今回は舞台でも主力メンバーとしてキラキラしていた。

また、すずきゆいの笑顔に磨きがかかっていた上に、身体つきもひときわシュッとした感じで、ステージの上で目を離せない姿を見せていた。

そしてアクロバットを披露するメンバーが増える中、たかやあんながストリートファッションでキレッキレのダンスとアクロバットを舞うという意外な一面を知ることができた。

今の一期生はもう誰が欠けても物足りなくなるくらいになったと言っても言い過ぎではないだろう。

次に二期生。

一足早くトップスター級へと成長したともだりのあは、純粋な雰囲気はそのままに美しく洗練されていって眩しすぎるほど。

クロバットで無二の個性を発揮しているみやはらにこは、歌でもダンスでもMCでも、ステージの中心に立って観客を楽しませることができるエンタテイナーであると実感する場面を何度も見せてくれた。

背がだいぶ伸びたあんどうはなは、ショートヘアの似合う美形として将来有望と思っているが、今回は「とらとら」の二人目のパフォーマーとして意外な顔を披露した。この先、どんな才能が開花していくが実に楽しみ。

しろみゆ、しものあやめ、いでいゆきは、半年前の夏公演のイメージで舞台を探すと見つからない。びっくりするくらい美しく成長している真っ最中で、そんな成長を間近で眺めていけるのもミモザーヌの醍醐味の一つ。

そして三期生。

夏公演での抜擢が記憶に新しいひろせしずくはさらに背が伸びた印象。たなかあかりは、アクロバットやダンスでも大活躍で、「飛び道具」を持つメンバーとして強烈なパフォーマンス。さかもとりるはは、前回からの「とらとら」の明るい雰囲気や、「おてもやん」での癒される雰囲気が、このカンパニーの中で得難い印象を残してくれた。

最後に四期生。

実は、今回の公演で、一番目を見張ったのは四期生の成長だった。

前回の夏公演では、まだよちよち歩きのペンギンのようだったが、今回はもうすっかり一人前のミモザーヌのメンバーになっていた。

美少女子役として他の作品でも活躍しそうなこじまさいか。自然な演技を少しコミカルな味わいで見せてくれるすずきよりほ。一期生二期生と共演しても引けを取らない大人っぽさをまとい始めたおかべはなこ。笑顔に癒されるかとうさや。清楚な雰囲気で心洗われるともだしずく。

オーディションを始めたばかりの五期生が加入すれば、彼女たちもまた”先輩”として成長した姿を見せてくれ、”お手本”となって”後輩”を導く逞しさを見せるようになるのだろう。

そんな「少女歌劇団ミモザーヌ」の先輩後輩の関係性というか、女子校にあると聞く上級生を「エンジェル」下級生を「チャイルド」とするシスター制度のような仕組みができているのではないかと感じさせるような公演だった。


この先、この素晴らしい少女歌劇団の世界が一日でも長く続き、一人でも多くの人の目に触れることを願ってやまない。