好きなものは好きという清々しさ〜『メタモルフォーゼの縁側』(2022年、日本、狩山俊輔監督)

鶴谷香央理原作のコミックの映画化作品。

最近は、この『メタモルフォーゼの縁側』といい『彼女が好きなものは』といい、ボーイズ・ラブを消費する映画から、ボーイズ・ラブを消費する女性を描く映画へと一段メタなレベルに上がっている感じがある。

ここまでくると、LGBTがどうのこうのというポリコレは全部すっ飛ばして、「好きなものは好き」というオタクの原点でブレないポジションが市民権を得ているかのように確立されていて、マイノリティオタクの立場からすると実にあっけらかんとして清々しいと映ると感じられると思う。

芦田愛菜演じる佐山うららは、オタクとしての後ろめたさを感じながら恐る恐る踏み出していく演技が素晴らしい。

『星の子』での演技も良かったが、元子役、とか、美少女女優とか、そんなカテゴリから脱却して大女優への道をしっかりと歩んでいる。

リアリティある衣装も良かった。

そして、あっけらかんとした態度ででも堂々とボーイズ・ラブにハマっていく市野井雪を演じる宮本信子は、今更言うまでもなく魅力的な演技で、この年齢になっても「かわいさ」を醸し出せるところが、また凄いなと思わされる。まさに圧巻。

この二人の年齢を超えた交流、そしてその交流でそれぞれが自分の道を踏み出していく成長物語になっているところが、実に心温まる作品になっていた。

脇役としては、幼馴染のイケメンを演じた高橋恭平も、優しさの中に情けなさと甘えを滲ませる程よいポジションと、幼馴染との遠くもなく近くもない距離感を絶妙に演じててよかった。

そして売れっ子漫画家を演じた古川琴音、スクリーンでも顔立ちがキレイで圧倒的なイマドキ感。


芦田愛菜宮本信子のデュエット曲のEDだけは狙いすぎ感があったけれども、劇中劇ならぬ劇中漫画が挿入される演出も実に自然で、映画としてよくできている。日テレ制作だったが、いやあこういうのもやればできるんだと思って感心(上から目線)。