『ナラタージュ』(行定勲 監督作品)

雨の日の今日、「ナラタージュ」を観に行った。


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演劇的な「間」や空気感を重視した演出、彩度を落としたシックな映像、ミニマルな音楽。

誰かを愛さざるを得ない人間の「情」を、倫理や純愛で過度に美化することなく描き上げる。行定勲監督らしく、甘い恋愛映画とは違う苦味が効いている。邦画よりもフランス映画に近い味わい。

「美化することなく描き」と書いたが、実際には松本潤有村架純というキャスティングにより、スクリーンに映る世界は相当に美しい。

倫理的には決して褒められたものではない行動でも、2人の役者の端正な佇まいや富山の美しい風景によって嫌味のない程度に美化されている。

作品の中でも雨のシーン多いなと思った。少し湿った情緒を演出し、記憶に長く残る場面とするには、雨は絶好のシチュエーションだと思う。

雨の車のシーンはある意味でクライマックス。

松本潤は地方高校の教師を演じても華は隠せず、有村架純は内なる自分を偽らずに生きる女性を好演。

太いフレームの眼鏡や野暮な服装で、アイドルオーラを封印したが、美しい佇まいは隠せず。「ずるさ」や「弱さ」を見せる演技で役者の幅を広げた感。

この先、さらに年を重ねて「疲れ」「諦め」が滲んでくると、別次元の「強さ」を見せる境地に行くかもと思わせた。

助演では、人間の二面性を自然に演じ切った坂口健太郎と、現役高校生の持つ思春期の眩しさと儚さを見せた神岡実希が強い印象を残す。

神岡実希は、制服姿も、演劇部の練習も、劇中劇「夏の夜の夢」も、どれも佇まいが美しくて説得力があり、「サブヒロイン」の趣。保護者ヅラのハコムスのヲタクだから、彼女の勇姿に涙が出た。「ハコムスの神岡」とは別の魅力が炸裂。今後も映画やドラマのフィールドで活躍が期待される。ヒロイン神岡実希を観たい。