どうしてこうなった―『ヴァン・ヘルシング』

『ハムナプトラ』シリーズで、娯楽映画の監督としての手腕を見せたスティーヴン・ソマーズが、監督・脚本・制作で関わったのが、2004年『ヴァン・ヘルシング』。吸血鬼、狼男、フランケンシュタインが入り乱れて争うという、エンタテインメントとしてはこの上ない舞台装置を持ちつつも、残念ながら失敗作に終わっている。興行的にも作品的にも。以下ネタバレ。

主演に『Xメン』のウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンを据え、トランシルヴァニアを舞台にゴシックな雰囲気を整えている。ポスターなんか実にいい雰囲気だ。冒頭からモンスターが画面を所狭しと飛び回り、CGにも相当の予算がかけられたと想像できる。

だが、映画が進むほどになぜかいっこうに盛り上がらない。B級にはB級の面白さがあるが、それもない。B級を通り越したC級だからだろうか。俳優の演技もなんだか変だ。特に人間からモンスターに変わっていくところがなんとも滑稽。俳優は、どこまでがその場の演技として必要で、どこからが後処理(CG加工)になるのか戸惑っているような印象さえ受ける。そう考えるとピーター・ジャクソンのリメイクした『キングコング』は良く出来ていた。監督にある程度オタク度がないとこの手のファンタジー映画はダメなんだろうか。まあ、あっちはナオミ・ワッツの演技力のおかげもあるだろうけど。

監督・脚本・制作が同一の人なのに、なぜかあちこちで噛み合っておらず、熱とか推進力を感じさせるところがない。まるでバラバラのパーツをかき集めたよう。最大の見せ場の吸血鬼と狼男の決戦は『ダンス・イン・ザ・ヴァンパイアバンド』のアニメの方がまだ迫力があったような気がする。そして、肝心のエンディング。まるで打ち切りアニメのような中途半端さ。消化不良。どうしてこうなった、どうしてこうなった…

ほぼ唯一の収穫は、主人公のお供のカールを演じたデビッド・ウェナム。彼のコミカルな演技だけが、登場場面にかかわらず直視できるものだ。『ロード・オブ・ザ・リング』でファラミアを演じた俳優だが、演技の幅に感服した。