『猿の惑星 創世記(ジェネシス)』を観た。2011年公開作品だが、ゼロ年代に大流行した「ゼロ」もの。つまり、シリーズの最初の物語の前日譚。
『猿の惑星』の場合には、この惑星がどうして猿に支配されるようになったのかを描くことになる。この点において、「ゼロ」の物語の常であるが、視聴者は結末を知っている。だから「何がおきるか」というWhatの点は既知であり、「どのように」というHowあるいは「どうして」というWhyに関心が集中する。
この作品の場合には、バイオテクノロジーが重要な役割を果たす。自らの技術と慢心によって先住者は自滅し、猿にとって代わられるというわけだ。20世紀の映画作品だったら、もう少し、外部要因的なものを原因にしただろう。つまり「気温の変化」や「隕石の衝突」など。そうではなく、「自ら撒いた種」としているのが、9.11後にしてリーマンショック後の作品らしいところだと思う。
ストーリーとしては残念ながらインパクトがなく、既知の状態に向けて物語が進んでいくのみである。飛躍がないとはいえるが、映画作品としてはビジュアルで見せ場を作らないと華がない作品になってしまう。
そこで力の入っているのが、猿のCG技術だ。俳優の演技力もあるのだろうが、あたかも人類よりも高度な知性を獲得し、複雑な感情を抱くかのように見せる技術は素晴らしい。この手のクリーチャーの描写としては、PJ版『キングコング』を完全に超えた水準である。技術的には『ハリーポッターシリーズ』のドビーや『ホビットの冒険』のゴラムに匹敵するが、知的で思慮深いキャラクターという点では、いずれにもない境地を拓いている。
そして、『ハリーポッター』で、マルフォイ役を好演したトム・フェルトンが本作でも登場。やられ役を演じたらこの人の右に出る役者はなかなかいないと思うが、今回も期待に応えてくれる熱演。
ということで、個人的には、見せ場として印象に残ったのはCGとトムのみ。え、クライマックスの大立ち回りはどうかって? あれで喜ぶのはアメリカ人だけじゃないかなあ。「〇〇ブリッジ、封鎖できません」的なネタは、万国共通なのかもしれないけどね。
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