『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018年、アメリカ)

映画『ミッション:インポッシブル』の公開は1996年。

60年代からある人気テレビ番組『スパイ大作戦』の世界観のリメイクとも言えるものだったが、トム・クルーズ演じるオリジナルキャラクターのイーサン・ハントが人気を博して大ヒット、続編が作られるに至った。

あれからほぼ四半世紀。。。

『007』シリーズなら、複数の俳優がジェームズ・ボンドを入れ替われるだけの年月を重ねているが、トム・クルーズは引き続きイーサン・ハントを演じている。

今年56歳となったトムが、文字通り身体を張る最新作が『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』。

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人物は円熟味を増し、チームは<関係性>が深まり、背景にいる<敵>や<組織>は複雑さを増す。

いわゆる「スパイ映画」としては、作品を重ねるごとに厚みが増している。

個人的には、「秘密道具」的なワクワクするガジェット系が弱い気がしないでもないが、チートなハイテクに頼らずに、オーソドックな装備と、フィジカルの強さと、関係性の絆と、強気の気合い(笑)で結果を出すのが、このチーム・イーサンなのかもしれないと思わされた。

今回の舞台の中心はパリで、この都市の持つ華やかさを十分に見せてくれる作品になっている。

今さらパリなんて陳腐では?と思えばさにあらず。

マーケティング的に言えば、欧米の観客を意識していた時代には、中東やアジアや中南米などの「エキゾチック」なロケーションを見せることが一番大事だったんだろうし、実際にそういう流れで日本が取り上げられたりするんだけど、いまは逆に中国の観客を意識する時代。

日本で「爆買い」と呼ばれるようなツアーの団体旅行客がシャンゼリゼのルイヴィトンを貸し切りにする時代に、「憧れのパリ」を取り上げる意味はマーケティング的には大いにある。

初作であったような「パリ=ロンドン間のユーロスターで大捕物」みたいなアングルではなく、もっぱらカーチェイスの舞台としてパリの街の魅力を見せる作品になっている。ベタなくらいに。


このシリーズは、「スタントなし」というのも売りの一つで、自動車やバイクでのカーチェイス、エージェント同士の格闘、上空からのパラシュートでの急降下、ビルからビルへのジャンプ、ヘリコプター同士のドッグファイト(この呼び方が正しいのかは知らない)など、見せ場も盛りだくさん。

トムは、2000時間を超える長いトレーニングを経て、ヘリコプターの操縦ライセンスを獲得するだけでなく、アクロバティックな操縦まで体得したというから恐れ入る。

トップガン』のイケメンパイロットのピートが、30年後にまさか本当に空中戦を行うとは想像だにしなかった。

また、ビルからビルへの大ジャンプシーンでは実際に骨折するというエピソードも報じられたが、「無茶しやがって」というよりは「どこまでガチなんだよ」という感情が先立って湧いてくる。

これが、ハリウッドでトップを走り続けてきた俳優トム・クルーズ56歳の最新作である。

エージェント映画としての完成度は高く、アクションだけでなく、人物造形の深み、プロットの練り込みも文句のつけようがない。

批判の余地があるとすれば、「あまりに王道ど真ん中すぎる」という難癖くらいしか思いつかないが、この手の「痛快スパイ映画」とはそういうものだろう。むしろ褒め言葉。

ということで、人気シリーズは今回も期待を裏切らないものになった。