小室哲哉の逮捕に思う

小室の音楽にはほとんど興味がない。「類まれなる才能」という形容もあったが、音楽家というよりもプロデューサーとしての能力に対する評価ではないかと思う。

小室には、このような詐欺事件を主導する才能はないだろう。金に困った末に誰かに入れ知恵されたのではないか。そして、そもそもあれだけミリオンセラーで稼いだ小室が金に困るようになったという時点で、既に不穏な勢力の影を感じる。金の行き先は、別れた女性への慰謝料だけではないはずだ。

報道によれば、香港の事業に数百億円を注込んだということだ。自己資金だけで数百億円を投入するとも思われないので、これは借入金とセット、つまりレバレッジを効かせた投資だったと思われる。そして、その融資を含めて全体が詐欺的な案件だったのではないか。この場合、詐欺の被害者は、当然小室本人ということになる。

芸能人が少し売れるとそこに付け込む輩がいるのは昔からのこと。最初は芸能人から毟り取り、その次はその芸能人の名を騙って一般人から金を騙し取る。

小室に批判されるところがあるとすれば、彼自身が豪遊したことや散財したことではなく、詐欺的な勢力に付け入られ、他人に被害をもたらしたという点だと思う。有名人として脇が甘かったと言える。

小室哲哉容疑者:世界進出で挫折…借金も15億円超

係官に付き添われ大阪地検に向かう小室哲哉容疑者=大阪市淀川区のホテルで2008年11月4日午前7時51分、小関勉撮影 数々のミリオンセラーを世に送り出した希代の音楽プロデューサーが地に落ちた。著作権譲渡をめぐる5億円の詐欺容疑で4日午前、大阪地検に逮捕された小室哲哉容疑者(49)。90年代、Jポップ界に「小室ブーム」を巻き起こし、長者番付にも名を連ねた小室容疑者だが、最近は15億円以上の借金を抱えていたという。転落の原因の一つとなったのは世界進出の挫折だった。

4日午前7時50分ごろ、小室容疑者は大阪市淀川区のホテルから、地検の係官が運転するワンボックス車に乗り込んだ。明るい茶色に染めた長髪、ジーンズにパーカーという若々しい身なり。終始無言で、伏し目がちの目にはわずかに涙が光った。約20分後、同市福島区の地検庁舎に到着。大勢の報道陣を前に、体を前かがみにしながら視線を左右に動かし、落ち着かない様子だった。そして逮捕。かつての栄光は完全に消えた。

98年1月、小室容疑者は「アジアに総合娯楽事業を」との触れ込みで、香港に音楽制作会社「ロジャム・エンターテインメント」を設立した。中国や香港、台湾などのアーティストをプロデュースし、アジアでの市場開拓が狙いだった。

当時、小室容疑者はJポップ界の頂点をすでに極めていた。TRFや安室奈美恵さん、華原朋美さんらの曲を次々にミリオンヒットさせ、96年の高額納税者番付は芸能界トップの全国4位。推定年収は20億円と言われた。次の目標はアジア、欧米へと向き、ロジャム社がその足がかりとなるはずだった。

ロジャム社は01年5月、香港の新興市場に上場。小室容疑者は会見で「アジアの国々に質の高い音楽コンテンツを提供していく」と高らかに宣言した。ところが、株価はわずか2週間で売り出し価格の半値を割り込み、その後も下落。02年度決算は約12億円の赤字となり、海外でのCD販売やプロデュースも伸び悩んだ。

結局、小室容疑者は04年、持ち株をすべて売却し、会長職を辞任。経営からの撤退を余儀なくされた。「小室は香港の事業に数百億円をつぎ込み、ばく大な損失をこうむったらしい」と話す関係者もいる。

海外に重点を置いてからは、国内の小室人気も陰りを見せる。00年以降は目立ったヒット曲が生まれず、消費者はすでに「小室サウンド」に飽き始めていた。01年には吉本興業と契約したが、大きな実績も残せず、07年に契約を解消した。

一方、小室容疑者の派手な生活や事業への投資は続き、借金ばかりが増えていった。小室容疑者関連のイベント企画会社「トライバルキックス」が、サッカーJ1「大分トリニータ」のスポンサー料を滞納したり、離婚した前妻への慰謝料の未払いが発覚するなどスキャンダルも続発。最近ではロサンゼルスの豪邸や高級外車などをすべて売却し、年間2億円を超えるヒット曲の印税収入も、大半が債権者に差し押さえられていたという。
毎日jp(毎日新聞)