「みんな」なんて信じない〜『きみの友だち』

監督と主演の石橋杏奈のトークショー付きで『きみの友だち』を鑑賞してきた。一言で言えば良い映画だった。写真で想像されるような「少女映画」ではなく、まさしく思春期映画。監督は『ヴァイブレータ』の廣木隆一。出演は、石橋杏奈、北浦愛、吉高由里子、福士誠治ほか。

映画 『きみの友だち』オフィシャルサイト

観客は女性が多いのではないかとなんとなく予想していたが、石橋杏奈が出演するトークショーの回だったこともあってか、ふたを開けてみるとなんと9割が男性。そして、どことなくヲタ風(もちろん自分を含めて)。

いじめやアイデンティティの模索など、思春期特有の痛さに加えて、人の生きる意味、友だちを持つ意味を問いかけるもの。監督の手腕なのだろうが、大げさにならず、押し付けがましくならず、淡々としているようで、それでいて確実に心の中に入ってくる。全く違う映画なのに『ヴァイブレータ』と似たような爽やかな気持ちで鑑賞を終えることができた。

たとえば、こんな台詞に泣かされた。

「私は『みんな』なんて信じない、本当に大切な人たちさえいればいい」

「ずっと一緒にいていい?私途中でいなくなっちゃうかもしれないけど。想い出たくさん残って、死んじゃうと嫌かもしれないけど。」

石橋杏奈はこれが初主演映画だが、中学生から20歳までの難しい役を全力で演じていて好感が持てた。北浦愛は『誰も知らない』でも見せた健気で無垢で儚い少女を演じきった。吉高由里子は、微妙な役回りだが、繊細さと同時に見せる強さが、今後の活躍を予感させた。そして、福士誠治は、清潔で優しくも男らしい魅力を見せ付けた。単なる二枚目ではなく、内面の充実を感じさせる良い俳優になると確信。

それにしても、トークショーで生で見た石橋杏奈はめちゃくちゃかわいかった。スクリーンで見る彼女は「女優」という感じだったが、生で見ると「アイドル」のオーラ全開。日本映画を担う若手女優候補として今後の活躍をよくフォローしていきたい。あ、廣木監督は、適度に枯れたオジサンだった(いい意味で)。