安心、安心〜『鉄コン筋クリート』

松本大洋の傑作・『鉄コン筋クリート』(公式サイト)の映画を観に行った。

13年前の原作マンガの世界が、ほぼそのままスクリーン上に再現されていた。感動。本当にクロとシロが飛んでる。ゴーグルをかけたクロ。ぬいぐるみの帽子をかぶったシロ。レトロな宝町の町。

マンガと若干違う印象になったのは、イタチの正体。微妙にアメリカナイズされていて、スター・ウォーズのダークサイドとか、ロード・オブ・ザ・リングサウロンを思わせた。

キャスティングについては、主役の二人を演じた二宮和也蒼井優が本当に素晴らしかった。原作のイメージを壊さず、観る者を冒頭から作品の世界へ誘った。出しゃばり過ぎたり、個性を出そうとし過ぎたりしなかったのが、功を奏したのだろう。

特に蒼井優。女優としての才能はもはや疑いようがないが、声だけでも十分に演技ができることを示した。今回の登板は「人気俳優が声優を務める」という話題性先行のキャスティングではない。「シロの声が蒼井優であることを忘れさせる」どころか「蒼井優でなければシロは成立しなかった」とさえ思わせる。個人的には、もうちょっと白痴的な雰囲気があってもよかったと思うが、シロというキャラクターの持つ純真無垢な面を巧く表現していたと思う。

劇場を出てからも、「安心、安心」とか「やっぱアレかな、死んじゃうこととか考えちゃうからかな」とか「クロのないネジ、シロがぜんぶもってる!」なんかの名台詞が頭の中で何度もループする。日本のマンガとかアニメならなんでもすごいというつもりはないけれど、原作の松本大洋のマンガといい、今回の映画といい、非常にクオリティが高いと実感。ジブリが駄作を作っても、こういう作品が生まれてくる限り、安心、安心。