櫻坂のライブに行くのは、8月20日のW-KEYAKI FESの最終日以来なので、ほぼ3ヶ月ぶり。
あの時は「『制服の人魚』を現場で観たいな」という軽い気持ちだった。
それが当日は、尾関梨香・原田葵の卒業セレモニーになってしまった。
二人の卒業セレモニーは感動的だったのでそこに立ち会えたことはよかったけれども、『制服の人魚』はセトリから外されてしまっていた。
個人的にリベンジの機会として、ツアーファイナルの東京ドームのチケットを取った。
今度は、菅井友香の卒業公演となってしまった。
卒業公演マニアみたいだけれども、そういう趣味はない。
しかし、欅坂46としてデビューしキャプテンとして激動の時代を乗り切ろうと苦闘し、グループが櫻坂46に改名してからも様々な困難に直面してきたといっても過言ではない菅井友香キャプテンの卒業は、このグループにとって大きな節目となることは間違いない。
結果的に、この日、僕は東京ドームで歴史的瞬間に立ち会うことになった。
序盤は、客席からのペンライトを消灯するようにというアナウンスがあってからの開演。
「Overture」から「条件反射で泣けて来る」「BAN」「Dead end」「断絶」「流れ弾」。
VJや照明を最大限活用したモダンでクールな演出。
アイドルグループというよりも、コンテンポラリーダンスカンパニーという趣。
以前東京ドームで観たPerfumeの演出を少し思い出す。
しかも櫻坂の人数の多さ、激しいダンスのキレで、これは相当な迫力。
個人的にはコンテンポラリーでクールな雰囲気なら、必ずしも生歌でもなくてもいいよなと思う。
MCで東京ドームが色とりどりのライトで満たされる。
モードは今度は「タイムマシーンでYeah!」「One-way stairs」「ずっと春だったらなあ」など、アイドル色の強い衣装と楽曲になる。
客席のファンもどちらかというとこういう路線の方をより求めているのかなあと感じられる。
「同調圧力に負けるな!」的なメッセージの楽曲の多いグループではあるが、ファンの方はペンライトの色を曲によって変えて鑑賞するあたり、すごく同調している方が心地よいように見えるのが、欅坂時代からこのグループのファンの面白いところ。
そして、いよいよ『制服の人魚』が来た!
歌詞にある「LEDの水槽の中」に入った4人が登場し、センターの花道を移動していく。
密かに期待していた「制服衣装」ではなかったけれども、念願の生パフォーマンスを食い入るように眺める。
想像した以上に笑顔が多めだった。
ここからはセンターチェンジをしながら『五月雨よ』『なぜ恋をしてこなかったんだろう?』『Nobody`s fault』。
「なぜ恋」で藤吉夏鈴が空に舞い上がる演出はまるでミュージカルのようだった。
「I'm in」「Buddies」でアイドルグループ色の強いブロックが終わると、ライブは終盤へ。
終盤は再び硬派な演出になり、『車間距離』『恋が絶滅する日』そして最新曲『摩擦係数』。
このクールで媚びない感じこそ、僕が観たい櫻坂46という感じだ。
楽曲、ダンス、演出がぴったりと噛み合って、他の現場では決して見ることのできないパフォーマンスを見せてくれる。
アンコールでは、欅坂46時代に観て以来久しぶりの『不協和音』、そして『砂塵』。
櫻坂にとって欅楽曲は一種の「タブー」みたいになり実質「封印」されていたような感じだったが、今回の東京ドームのアンコールで「解禁」したのは、菅井友香卒業ゆえの例外なのか、それともこの先シームレスに欅・櫻を演っていくのか、それは分からない。
個人的には後者であってほしい。
決して懐古ではなく、過去の呪縛を解き放って新しいステージに進む意思の表れであると期待したい。
菅井友香の卒業セレモニーでは「アンバランスなグループで、キャプテンをやっていって色々なことがあった」と語っていたが、今回の彼女の卒業はそういうアンバランスさを一気に清算する好機でもあると思う。
アンバランスだけでなく、改名のハンデや櫻坂としての路線の模索などもあり、今の坂道グループの中では、世間の人気が高いとは言えない存在になっている。
だが、序盤と終盤で見せてくれた「コンテンポラリー・ダンス・カンパニー」的なパフォーマンスを見せられるグループは貴重だ。
その路線を、来る3期生とともにグループとして進んでいって、唯一無二の存在となって欲しい。
そう思わされる東京ドーム公演だった。
この先どんな3期生が入るのか、そしてグループとしてどのような活動をしていくのか、楽しみに見守っていきたい。