コロナ禍の中、「不要不急」という言葉が多く使われたが、何が「不要不急」かについては、認識が一致することはついになかった。
音楽ライブ、演劇、そして映画までもが、自粛を余儀なくされた時代が長く続いている。
だが、一つ言えるのは、僕にとっては、芸術は不要不急ではない、ということ。
そんな人たちに希望を与えようと、東京バレエ団は「HOPE JAPAN 2021」と銘打った全国公演をスタートした。
スタートは東京文化会館。
初日の今日は客席も満席。
ベジャール振付の作品ばかりを集めた統一感のあるもの。
第一幕は、柄本弾のソロが圧倒的な存在感を放つ『ギリシャの踊り』。
地中海の海辺を思わせるようなコールド、演出が美しい。
第二幕は、黛敏郎の『舞楽』、そしてベルリオーズの『ロミオとジュリエット』のパドドゥ。
短い時間の中に凝縮されたダンスを楽しめた。
そして、第三幕は『ボレロ』。
これを観たかった、観に来たという上野水香の堂々たるダンス。
自信にみなぎる力強さ、そして女性ならではの美しさが、高次元で両立している。
静かに始まって、徐々に高まっていき、最後は観客をも巻き込んで陶酔の域に達していく。
こんなに神々しいのかという感動。
日本人女性でこれを踊るのを許されているのは今は彼女だけだということだが、そうだよなあと納得させられるだけのもので、間違いなく世界レベル。
カーテンコールは当然スタンディングオベーション。
拍手の嵐の中で、時に親しみやすい表情を浮かべ、ダンスしている時の気高い表情から一転して投げキッスするというかわいさにもやられる。
これは、本当にいま見るべき公演だ。