先月観た『シンデレラ』ですっかりそのフレッシュさに魅せられた池田理沙子のアリスを観に新国立劇場へ。
オペラパレスはもうロビーからワンダーランド。
演目的には、古典的な「バレエ」の枠を拡張するような意欲的な新基軸が全面的に成功している印象。
タップダンス、ベリーダンスも入れた舞踏、大道具のほかにプロジェクターも大胆に取り入れた演出効果。
オーケストラも、クラシック的なテイストをベースにしつつ、劇伴的な要素が強く時に効果音をはっきりと伝えてくる。
これは21世紀の大人から子供まで全年齢が楽しめる総合芸術。
コミカルな演出も効果的。
自分が観覧するジャンルの中では、結構ミュージカルに近い空気感という感じ。
あちらが「歌」で訴求してくるところを、「踊り」と「表情」で伝えてくるというべきか。
キャスティング的には、フレッシュな池田理沙子のアリスと王子様感の強い井澤駿のジャックの二人にうっとりさせられる。
特にパドドゥのファンタジー感が凄い。
また、ルイス・キャロルと白うさぎを演じた速水渉悟のどこか飄々とした感じも印象的だった。
そして、特筆すべきは、ハートの女王を演じた本島美和。
威厳を持った美しさと無茶振りのコミカルな顔芸と完璧なダンス。
何度も反復される死刑宣告のポーズは、無声のはずなのにまるで「お前たち!やーって、おしまい!」の声が聞こえるような気がした。
この回を持って新国立バレエ団を退団すると発表したこともあり、カーテンコールでの拍手の大きさも際立っていた。
バレエは歴史ある芸術ではあるが、保守的な「古典芸能」の枠組みの中に留まろうするのではなく、新作や新演出によって表現のフロンティアを切り開いて行く試みがあるのが面白いところだと思う。
新国立バレエ団、常にこちらの期待を上回るものを見せてくれる。
この先の公演も楽しみ。