破滅と滅びの美学〜『ヤクザと家族 The Family』(2021年、藤井道人監督)

去年の日本アカデミー賞で三冠を取った藤井道人監督の最新作『ヤクザと家族 The Family』。

www.yakuzatokazoku.com

基本的にヤクザ映画は観ないんだけれども、いま自分が最も注目しているクリエーターの常田大希率いるmillennium paradeが主題歌「FAMILIA」を提供しているということで、観に行ってきた。

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どうせヤクザ映画観るなら歌舞伎町だろということで、新宿TOHOシネマズを選んだけれども、この日はレディーズデイということもあって、女性が多く、中には極妻風の女性を伴ったその筋風の人たちの集団も見かけた(微笑ましい光景)。

内容は、任侠を美化するというよりは、世の中が変わっていく中で時代遅れとなった「ヤクザ」の虚しさを描いたもの。

主演は綾野剛であるが、怒り、悲しみ、弱さ、強さを全部演じ切っていて、俳優として素晴らしいと実感。

また、組の親分を演じた舘ひろしもさすがの存在感と凄み。

絶頂期のオーラから、晩年の弱さまでを説得力のある人間味をもって演じた。

若手では磯村勇斗のクールさ、小宮山莉渚の透明感が印象に残った。

全体的に、破滅に向かってまっしぐらという感じのプロットで、ちょっと理が勝ちすぎている嫌いはなきにしもあらずだけれども、行き場をどんどん失って破滅に向かわざるをえない現在のヤクザの悲哀、その中で「血で血を洗う」連鎖ではない形で命を捧げることの意味を感じずにはいられなかった。

ラストに流れるミレパの「FAMILIA」は、テーマと完全にシンクロしていて余韻を残す。

そういう意味では、破滅と滅びの美学を徹底的に貫いた作品と言えるかもしれない。