『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』(辻真先)

レジェンド辻真先、88歳にして新作が出るだけでももう奇跡だと思うのだが、内容が充実していてまた驚いた。

冒頭こそやや古めかしくて現代小説とは違った味わいでやや読みにくさを感じるが、ひとたび物語が動き始めれば、キャラクターはみずみずしく、そして絵に描いたような学園ミステリの世界で、密室殺人とバラバラ殺人が連続で起きる。

だが、単にトリック・謎解きのミステリにとどまる事なく、高校生の登場人物たちに青春時代ならでは甘酸っぱい思いが滲み、そこに戦後の混乱という時代のうねりが輪をかけてドラマを生み出していく。

終盤には「読者への挑戦」的なフェアな問いかけもあり、オーソドックスなミステリ好きにはたまらない。

そして登場する探偵も、典型的なアームチェアディテクティブで、「新本格」ではない「本格」を思い出させてくれた。

最後の最後に、ジョン・ディクスン・カー並みの一発を食らわされるところもまた良い。

これを「現役の作家」の「新作」として読めることに感謝したい。

88歳でなお活動する辻真先を見て、自分ももっとクリエイティブに生きていこうと思いを新たにした。