『人形館の殺人』『異邦の騎士』

大阪の夏は暑いといわれるが、今年に限っては東京とそう変わらない。

行きの新幹線で、綾辻行人人形館の殺人』を読む。このホラーな雰囲気は、スティーブン・キングを彷彿とさせて、個人的には好ましいと感じた。が、最後まで読んで見ると、決して傑作とはいえないと思う。「新本格」というカテゴリには入らない意欲作だとは思うが…。

帰りの新幹線で、島田荘司『異邦の騎士』を読了。あまり期待せずに読み始めたが、後半のめくるめく展開に引き込まれ、思いがけない拾い物だった。ミステリとしてのドンデン返しにも驚かされるが、それよりも恋愛や友情に関する描写に心を動かされた。『占星術殺人事件』や『斜め屋敷の犯罪』では御手洗潔のキャラクターは今ひとつはっきりしないが、この作品での彼のキャラは非常に温かみがあり、読んでいてとても気持ちよい。時代を感じさせる音楽の描写も、村上春樹っぽくて、お洒落な感じがした。