『クワイエット・プレイス』(2018年、アメリカ)

「音を立てたら、即死!」 というコピーが印象的なホラー映画。

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最初に書いてしまうが、徹頭徹尾「低予算のB級ホラー」という趣。

「目は見えないが、音に反応して人(動物)を襲うモンスター」から逃れる一家を描くという作品。

監督・脚本がジョン・クラシンスキー。主演は彼の妻のエミリー・ブラント

ちなみにジョン・クラシンスキーも「夫」役で出演。

実の夫婦が「家族愛」を描くという非常にパーソナルな背景を持った作品なのだが、そこを全面に出さずに宣伝されているのに違和感を禁じざるを得ない。

おそらく予算的な制約から、「エイリアン対人類」みたいなスケールの描写はなく、そういう時期を通り越して、「絶滅寸前の危機となった世界」での一家族のサバイバル生活を描く。

他にほとんど「人間」も出ず、敵となる存在もどれだけ知能があるのか分からない描写。

となると、本当に「音」で勝負するしかないという世界観。

「音を立てたら、即死!」という緊迫した設定の割りには、囁きはOKだったり、常に大きな音の立っているロケーションでは叫んでも大丈夫とか、緊迫感は低め。

クライマックスは、主人公の女性が出産を迎える、すなわち赤ちゃんが泣き声をあげてしまう、というスリリングな展開にあるのだが、なんとも拍子抜けするような危機回避が見られただけだった。

実際、人類が絶滅寸前まで追い込まれた(ようにしか見えない)この世界で、この家族だけがサバイブしてどうなるのか、どこに希望があるのかは、はっきりと描写されていない。

夫婦合作とも言える態勢で作り上げた作品が「バッドエンド」にできるわけもなく、結末は「家族愛」を描いたと評されるものになっているが、そうとしか形容のしようがない、「不条理サスペンス作品になり損ねたファミリー作品」という感じ。

「音を立てたら、即死!」というよりも「家族で力を合わせて生き抜こう!」というコピーを付けた方が、この作品の本質を表していただろう。

それで観に行く人がどのくらいいるのか分からないけど。