物語は永遠に続く―東京女子流CONCERT*05,*06@渋谷公会堂

さよならは 次に会うための 色あせることのない約束
物語は永遠に続く
東京女子流「キラリ☆」)

アイドルブームはピークを越え、市場は縮小に向かうと言われている。来年は淘汰の時期になるかもしれない。

そんな2014年の年の瀬、東京女子流渋谷公会堂で年末の勝負ライブを行った。去年、一昨年は武道館でやっていたものだ。

キャパという観点では、武道館から渋公への変更はスケールダウンに見えるかもしれないが、内容まで含めると全然そんな一言で片づけられない。今回は、昼と夜で全くコンセプトを変えた二部制で、これが予想以上に充実していたからだ。

「カワイイ女子流さよなら」の昼の部

昼の部は「カワイイ満載見納めPARTY」という副題が付けられた。要するにいままでのカワイイ女子流はここで見納めということなんだろう。

サンタの衣装で登場し、「孤独の果て」「鼓動の秘密」という初期の女子流を代表する曲から始めて、これでもかというくらいのカワイイ連発。


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ソロの楽曲を挟んで、パステルカラーの衣装に着替えてさらにカワイイ雰囲気になった後半は、「はなかっぱ三部作」の「おんなじキモチ」「 大切な言葉」「ちいさな奇跡」のフリコピのMVをスクリーンで流したり、ラストは「ヒマワリと星屑」「Attack Hyper Beat POP」で盛り上がったり。


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アンコールの「ゆうやけハナビ」では、結成以来の女子流の歴史を振り返る写真が流れ、胸が熱くなった。最後に「キラリ☆(Royal Mirrorbox Mix)」を会場のファンも一緒に大合唱して締め。女子流とファンの決意も感じられ、これまでの女子流の活動の総括のような意味合いの昼の部だった。

(セットリスト)

1. 孤独の果て
2. 鼓動の秘密
3. Rock you
4. sparkle
5. Don’t Be Cruel
6. W.M.A.D.
7. 頑張って
8. We Will Win!
9. きっと 忘れない、、、
10. love like candy floss
11. クリスマスメドレー
12. Come on Honey
13. Spica
14. day by day
15. kawaii rave
16. share harts
17. おんなじキモチ
18. 大切な言葉
19. ちいさな奇跡
20. ヒマワリと星屑
21. Attack Hyper Beat POP
(アンコール)
en1. ゆうやけハナビ
en2. キラリ☆(Royal Mirrorbox Mix)

「新しい女子流」を見せつけた夜の部

ダークな不協和音のOPSEと、寒色系の照明が不穏な空気を増幅する。

そこに運ばれてきた5つの棺。その中から黒い女子流が姿を現す―カワイイ女子流はいなくなったが、カッコイイ女子流が生き返った、とでも言うように。

「十字架」から始まり、「ディスコード」「Life Size」「Limited Addiction」と、クールなダンスミュージックを続けざまに披露。


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発売になったばかりの「Say long goodbye」は、二階建てのステージセットをフルに活用した演出と証明で、この楽曲の壮大な世界観をまざまざと見せつけた。5人のコーラスも、僕がいままで聞いた中では最高の出来で、これからの女子流がこのようなコーラスワークに力を入れるのであれば、ますます楽しみになると思わずにはいられなかった。

後半の愁眉は、赤坂ブリッツの定期公演で見せたハードボイルド路線の「pale blue nocturn」「existence」「game」。これはもう、アイドルとして見ると全く取りつくしまもないと感じるくらい、強くて、美しくて、カッコイイ楽曲群。手の届かない所に行ってしまったな、と感じさせる。


リーダーのめいてぃんが「いままでよりもダンスとボーカルに磨きをかけて行きたい。これから歌うのは、新しい女子流ではこんな曲を歌っていきたいという曲です」と言って、「partition love」と「count three」を。

デビューのときに背伸びした少女たちは、いまや大人っぽい歌が似合うようになってきた。まだ大人ではないが、背伸びを続けて大人路線をきわめていくのが、女子流には似合うように思える。

アンコールは、「新たな出発」という意味の「a new departure」、そして「キラリ☆」。


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(セットリスト)

1. 十字架
2. ディスコード
3. Life Size
4. Limited Addiction
5. bad flower
6. Liar
7. Mine
8. Say long goodbye
9. サヨナラ、ありがとう
10. 恋愛エチュード
11. ずっと忘れない
12. 約束
13. 運命
14. 月とサヨウナラ
15. pale blue nocturn
16. existence
17. game
18. partition love
19. count three
en1. a new departure
en2. キラリ☆

続いていく女子流の物語

さて、今後アイドル市場が実際に縮小、淘汰に向かうとして、女子流は生き残れるのか。

ダーウィンは「種の起源」でこう書いている。「生き残るのは、最も強いものでもなく、最も賢いものでもない。変化に対応できるものが唯一生き残る」と。

いままさに女子流は変化に対応しようとしている。

終演後、山邊未夢はブログを更新し、こう語った。

私達は可愛さを売りにしない
歌とダンスだけで勝負が出来る
アーティストになりたいと思ってます
その為にはまだまだだということ
今のままでアーティストになれるとは思っていません
想い。|東京女子流 山邊未夢オフィシャルブログ「未夢's memory」Powered by Ameba

可愛さをも売りにしてきた女子流が、そこに頼らずに、歌とダンスだけで勝負するとしたら、それはとても狭くて険しい道だろうと思う。

べーやまさんの言う通り、厳しい言い方をすれば、それは「まだまだ」と言える。

だが、変化に対応し、自らの姿を変えようと自覚して努力を始めた女子流は、僕の目にはとても美しく、強い存在に映っている。

6月の野音で見せた他の追従を許さないような生バンドライブは本当に素晴らしかった。今回の年末ライブも二部構成で重なっている曲は「キラリ☆」しかなく、トータル5時間で、ここまで約5年間の活動の集大成と今後の方向を示した。しかも楽しそうに。彼女達こそ本物のエンタテイナーだと思った。

これだけライブが楽しいと、握手会とか特典会なんかなくてもいい。むしろ、ステージの上の輝く姿を脳裏に焼き付けて家に帰りたい、そんな風に感じた。この日、渋谷公会堂に集まった多くの観客が同じ想いで満ちているのなら、女子流のアーティスト路線は大いに勝算が立つだろう。

昼と夜のアンコールの最後に歌った「キラリ☆」の歌詞にあるように「物語は永遠に続く」ということを、女子流メンバーもファンも願っている。その願いで会場は一つになった。女子流の物語は、まだまだ続く。