妖精のような天使のような―今井遥トークショー@チャコット新宿店(4/27)

4/27、チャコット新宿店にて、フィギュアの今井遥選手のトークショーが行われた。

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店内に設置されたスペースには約20人の招待客席と立ち見スペース。招待されていない僕は、早めに行ってセンターゼロズレを確保。

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TVモニターが設置されている右のスペースには、衣装が3点、赤系、青系、緑系と3点展示されている。競技で見たことある記憶がある。本物だからだろうけど、残念ながら撮影禁止。

開始の14時には全部で100人以上来ている感じ。招待客席は、フィギュアスケートをやっている雰囲気のジュニアの選手とその家族と思われる人達が座った。

予定から15分押しで、まず司会の野口美恵さんが登場。自身のスケート経験を生かしたフィギュアスケートの記事に定評のある記者。

続いて、いよいよ今井遥が登場。

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チャコット公式より拝借)

野口記者いわく「妖精」! 場内からは「わあ」とか「かわいい」とか思わず漏れたような溜息が聞かれる。

春らしいジルスチュアートのベージュ系に白襟のワンピース。首元にはパール系の控えめなワンポイントアクセサリ。清潔感のある黒髪は、毛先が軽くカールしている感じで、トップを白系のヘアバンドでまとめている。それにしても、色が白くて華奢。

トークは、野口記者の軽妙な進行で始まる。2013年10月のスロバキアの大会で優勝してから帰国したタイミングで盲腸を発症したときのエピソードの紹介から。

何日まで入院するのか、手術が必要なのか、とにかく不安でした。死ぬのは怖くないけど、全日本に出られないのは怖い

(この件は、野口記者のこの記事が詳しい:妖精の可憐さと、雑草魂の根性娘。今井遥、逆転のソチへ完璧を期す。(1/4) - Number Web : ナンバー)

この発言を評して、野口記者は今井遥を「ど根性娘」と呼ぶ。確かに、今井遥は強い気性を秘めているのだろう。氷上で魅せる優雅で華麗なスケーティングからは想像もできないくらいの。いまこの瞬間も、マイクを持つ手の指先まで行き届いているような美しい持ち方なのに、この外見の優雅さに隠された内面の強さこそ、彼女の本当の魅力なのかもしれない。

話題は、アメリカ滞在時代の生活へと移る。環境の変化で苦労した話。特にどこに行くにも車がないとダメなので免許がないときにはホームステイ先にすごく気を使ったとか、食べ物が口に合わずサラダ中心にしてもチーズとかドレッシングでカロリーが高くてダイエットしようとしても体重を増やさないようにするだけで精いっぱいだったことなど。練習をしながら体型を維持するのは大変なことだろうと思う。

そして、話題はスケートを始めたきっかけに。当時もう9歳ということで、決して早い年齢ではない。きっかけも、仲のいい従姉妹がスケートを始めたのに合わせてということで、最初は、週末も含めて一緒に泊まれるからというのが本当の動機だったという実に微笑ましい内容。その従姉妹がいなかったら彼女はこの世界にいまいなかったんだろうと思うとなんだか不思議だ。

そのエピソードをきっかけに、VTRでジュニア時代の映像が紹介される。最初は小学校6年生のもの。伸びやかな演技ではあるがまだ荒削りなところもあり、野口記者からも「素質は感じたけれども、将来世界大会で優勝するとまでは思えなかった」との解説。続いて、中学校1年生、2年生、3年生。この中3のときの演技は、それまでのものからの飛躍を感じさせる優雅なもので、今井遥の演技の開花を思わせるものだった。

続いて、チャコットのデザイナーの伊藤聡美が登場し、衣装に関するテーマについて3人の鼎談に。まず、チャコット今井遥の衣装を手がけるようになったきっかけについて野口記者が質問すると、伊藤さんが「私はダンスの衣装を手掛けていたんですが、フィギュアが好きで、特に遥さんのファンで、作らせてほしいと提案した」と。その提案を受けて話を聞いた今井遥選手が「ぜひお願いします」ということで始まったそう。いま、あちこちで、ファンがアスリートやアーティストを支援する形を目にするが、相手の才能を理解した上で、一方ならぬ愛情をもって取り組むことは、ビジネスライクな提供よりも、ずっと良いものになる可能性を持っている。

今回の衣装提供の決め手も、今井遥の演技と音楽に合う衣装を提案したところにある。

フィギュアスケートは技を競う競技であるが、音楽と演技が響き合うことが大事で、そこにおける衣装の役割の大きさを改めて認識させられた。

また、今井遥の場合には、冷え性なので長袖だで薄手の素材がいいとか、冷えないように常に手袋をしているとか、ジャンプを跳ぶのに重くならないようべロアの生地を避けるとか、こだわりのあるポイントが紹介された。

そして、野口記者からは、フィギュアの得点は演技本位ではあるが、やはり衣装の見た目にも影響を受けるとの説明があった。面白かったのは、ゴージャスに見せるためにスワロフスキーをふんだんにあしらったものを提供したが、着てみた時に重かったので、スワロフスキーの一部をビーズに替えたというエピソード。こういう見た目の豪華さと演技のための軽量化の微妙なバランスこそ、まさに着る人の演技の特徴を知りつくしたデザイナーの腕の見せ所だと思った。

会場に展示されている衣装は、今の遥ちゃんの優雅な演技を引き立てる上品でシンプルなものばかりだが、本人によれば「次のSPは、強いイメージで、スペイン系にする」とのこと。それに合わせて、衣装の方もさらに情熱を表現したアグレッシブなものになるのかもしれない。フィギュアの演技のために、ずっとバレエを習っているということだが、今回、スペイン系の演技を獲得ために、フラメンコの勉強もしたとのこと。

今井遥と言えば優雅な演技が持ち味だと思っているけれども、そんな彼女の演技と情熱的でスペイン系というのは簡単には結び付かない。だが、こうやって、自分にないものを獲得するために課題を課して挑戦する姿勢は本当に素敵だと思う。

ここまで来て、伊藤デザイナーが退場。会場からの質問を受け付けることに。進行を仕切るチャコットのスタッフが会場に「質問のある方?」と聞くとあちこちから手が挙がる。スタッフの選定で、まず女性が当てられる。

Q「休みの日はどんなことをして過ごしていますか?」
A「家で体を休めていることが多いです。好きなブランドの洋服をネットで見たりするのが好きですね。外出は、たまに友達とごはんを食べに行くくらいかな」

続いて別の女性。

Q「今日も素敵な髪型ですが、こだわりはありますか?」
A「ずっと短くしていたんですけど、ドライヤーするのが面倒くさいんですよ。で、切りに行く時間がなくて伸びたんですけど、いまの長さくらいでいいかなと思います」

あれ、遥ちゃん、意外に面倒くさがり?(笑) まあ、多少は照れ隠しもあるのかもしれないけれども。

続いて、招待席のスケートを習っている子供から。

Q「スピンが上手にできないのですか、どうやったら上手くなれますか?」
A「(できないスピンと得意なスピンの種類を聞いて)得意なスピンでイメージをつかんで、その形で他のスピンもやるといいと思います」

さらにスケートを習っている別の子供から。

Q「アクセルができませんが、どうやったら飛べるようになりますか?」
A「私も最初できなかったから大丈夫。練習していれば、そのうちきっとできるようになると思います」

未来のフィギュア選手を夢見て努力する子どもたちに接する彼女の優しさが光った。

続いて男性からの質問。

Q「遥さんにとってフィギュアの魅力とは何でしょうか、また次の目標を教えてください」
A「フィギュアの魅力は、目標にしてきたことができたときの喜びですね。(もう一つの質問は何でしたっけ?と隣の野口記者に確認した後)次の目標は、4年後のオリンピックに出て、メダルを獲ることです!」

きっぱりとした力強い宣言来た。こういう発言に痺れる!憧れる! ちなみに、いかにも僕が聞きたそうなことだけど、聞いたのは僕ではない(笑)

続いて、また別の男性から。遥ヲタ多いな、自分もその一人だけど。

Q「SPはスパニッシュ系にするとさっき仰っていましたが、フリーの方はどういうものになりますか?」
A「いまのものを少し変えるか、全然違うものにするか、いま考えているところです」

競技の性格上、秘策にしたいこともあるだろうに、相当率直に答えている遥ちゃん。質問する側はそこをわきまえて、お手柔らかにしてほしいと思う。

スタッフから「お時間の関係で質問はあと二人」とのお断りの後、次の質問者として女性が選ばれる。男性が続けて難し目の質問をしたからかな。。。

Q「フィギュアの演技にはいろいろな経験が生きてくると思いますが、いま噂になっている男性とのことについてお伺いしてもいいでしょうか?」

だ・か・ら! お手柔らかにして欲しいのに。。。っていうか、この質問アリなの?ていうか、質問した人、週刊誌の記者さんか何かなの?

スタッフが気を使って「大丈夫ですか?」と聞いたのに対して「大丈夫です」言って、こう答えた。

A「噂っていうのは、羽生選手とか町田選手とかのことと思いますけど、そうですね、羽生選手とは、一緒にフィギュアをやってきた同士で、仲が悪いということはないと思いますけど、それ以上何かがあるということはないですね。あと、町田選手とは…正直言って、世代が違うというか(場内爆笑)、先輩なのでお話する機会がずっとなかったですね。最近少し話すようになりましたけど。ということで、二人とも選手として尊敬していますが、噂のようなことはありません!」

ときに笑いを取りながら、最後には明るく噂を否定する。今井遥最強だな。野口記者は「妖精」と言ったけど、僕には「天使」に見える。遥かわいいよ遥。

最後の質問。女性から。

Q「今後、挑戦したい技はありますか?」
A「フリップトウループを跳べるようになりたい。ピョンチャンオリンピックでフリップトウループを跳びたい」

野口記者からはいかに難易度の高いジャンプであるか(特にジャンプに関する採点が厳しくなっている昨今では)ということと、それが出来れば、日本のトップはもちろん、一気に世界のトップ争いに入れるという解説がなされる。

質問コーナーの後は、入場整理番号による抽選会が行われた。賞品は、10名に今井遥サイン入りポストカード、3名に今井遥サイン入りポーチ、そして、3名に野口美恵サイン入り著書。僕の整理番号は9番。

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本人がクジを引いていく。一番大きな番号は110番台。当たりは16人。ということは、当選確率は7人に1人のはずだが…どうも呼ばれる番号に偏りがあった感じで、クジには当たらず。残念。だが、間近で今井遥選手をずっと眺めていられるという幸せな時間だった。ほぼ1時間半のイベント。

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チャコット公式より拝借)
スケートリンクで見る繊細で可憐な演技とは違った、おおらかで開放的で逞しい彼女のパーソナリティがよくわかる時間だった。野口記者の司会進行も巧みで楽しめた。今井選手のことを何度も「ど根性娘」と紹介していたのが印象的だった。そんな頑張り屋の一面を知ってますますファンになった。

4年後のピョンチャンという夢に向けて彼女は努力を続けるだろうし、いまの努力を積み重ねて行けば、きっと代表選手に選ばれるだろうと信じている。そしてオリンピックの大舞台で、今井遥らしい優雅な演技で世界中を魅了して、メダルを獲得してほしいと願う。これからも彼女を応援していきたい。