出版社で新しい辞書を作るというシンプルなプロットながら、気の遠くなるようなステップを地道に進めてどっぷりと仕事にはまる主人公の姿には、自分としては共感を覚えた。
個人的な好みで言えば、志を同じくする同僚の熱い友情をもっと描いて欲しかったのに、結局は恋愛要素に尺を割くことになっているのが、どうもこの映画の本質をわかりにくいものにしている気がする。
監督の石井裕也は、まだ若いからかもしれないが、作品全体の中に監督の作家性みたいなものが希薄に感じられる。職業的信念を描いた作品なのに、監督の職業的信念が伝わってこないのは問題だろうと思う。もう少しこだわりが欲しい。いや、きっとあるだと思うけど、前面には出て来ていない
。
本屋大賞と言えば映像化、というくらい映像化されるのが当然となる賞なのだが、この作品に関してはややもったいない映像化という感想。