2年くらい前、個人的にクリント・イーストウッド監督作品がブームになった。きっかけは『チェンジリング』を見て、その本格的な味わいにノックアウトされたからだったと思う。
そして、久しぶりにイーストウッド監督作品を視聴。『スペース・カウボーイ』。批評家筋にはほとんど無視されている作品である。が、見終わると、これは洒落の効いたエンタテインメントであることが分かった。
ストーリー的には、かつての空軍パイロットだった老人4人が、老朽化してトラブルを起こした人工衛星の修理のために宇宙に向かうというもの。キャストとしてはイーストウッドが「ちょっと偏屈だが妥協のない」主人公といういつものキャラだが、サブキャラのトミー・リー・ジョーンズの方が、ストーリー展開上強い印象を残す。
このような「地球の危機を救うためにアメリカのヒーローが宇宙へ」みたいな設定の作品には、ともすると大袈裟さや、嘘くささや、「お涙頂戴」的なあざとさがつきまとうが、本作品の場合、そういったケレン味は完全に抑えられていて、見ていて不快になることがない。ユーモアも込められている。このあたりに、イーストウッドらしい美学と洒落を感じる。
ストーリーとしては「60歳を越えて初めて宇宙に挑むパイロット」を描いているわけだが、メタレベルで言えば「60歳を越えて初めて宇宙映画に挑む監督」であるイーストウッドを映し出しているとも言える。
その意味では、この作品の存在自体が、まさに老人力を体現している作品。
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