小山田による「音故知新」ーYMOのNHKライブ


YMOのNHKライブをTVで観た。放送は2週間前で、話題としては少し古くなってしまったが、ようやく録画を観ることができたので。

素晴らしい演奏。"Firecracker"で始まり、"Behind The Mask"に繋がる流れはYMO自体の歴史をなぞるよう。と思っていたら、次になんと"Seoul Music"だ。これはいつ聴いてもグルーヴ感が心地よい。幸宏のジャストなリズムに、細野さんのうねる太いベース。教授のメガフォンもキタコレ。

ここから"Gradated Grey"、"Cosmic Surfin’"、"Absolute Ego Dance"、"Tong Poo"、"Rydeen"と怒涛の展開。ライブ向きの名曲ばかりでの直球勝負。逃げも、ごまかしも、照れもない。この3人が2011年に集まって演奏していること自体が奇跡だと思う。感慨深い。

今回、YMOの3人のメンバーをサポートするのがさらに3人。小山田圭吾権藤知彦、クリスチャン・フェネス。
ここに小山田がいるのに全く違和感を感じない自分がいる。でもこれって実は凄いことだよな。80年代・90年代を通じて、坂本フォロワーあるいはYMOフォロワーのキーボード・シンセサイザイー奏者は五万と世に出てきたのに、他の誰でもなくギタリストの小山田が涼しい顔でこの場にいるのだから。

もちろん、小山田の参加にはいくつか伏線もあった。最たるものは、坂本龍一の「スコラ」に細野、高橋がゲスト出演したときのサポート。あのときの演奏はすごく気負いが感じられた。ギターソロのパートではかなり暴れていて、よくも悪くも存在感たっぷりだった。

それに対して、今回の小山田の演奏は、いい具合に「伴奏」の位置まで下がっていたと思う。それでも、キレのいいリズミングや、思いがけぬ音程をときに織り交ぜるスリリングさが、聴きなれたYMOのテクノポップに程よく新しいフレーバーをかけていた。小山田のギターで生き生きと現代性を獲得するYMO。年を重ねてややマイルドになった3人の演奏に、ほんの少しの魔法、というか、ほんの少しの熱を加えるのが、彼に期待された役割だったのだろう。そして、彼は見事にその期待に応えた、と思う。

ということで、四字熟語風になぞらえるならば、これは「以心電心」ではなく「音故知新」とでも呼ぶべきかもしれない。 小山田による「音故知新」。文句なしの名演奏。DVD出ないかな。

以下は蛇足。演奏は非常によかったが、間に差し挟まれる昭和な「寸劇」は個人的にはいらなかったかなと思う。いや、何というか「3人のテンポの微妙なズレ・うねりを楽しむというファンサービス」であることは理解できるんだけど。コタツにドテラにカツラにミカン。もうその設定だけでおなかいっぱいだ。その分、もっと演奏を聴かせてほしかったかな、と贅沢なわがままを言ってみたり…