金曜ロードショーの『ヱヴァ破』は一見さんに優しかったか

地上波で初めて『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 破』がTVで放送された。視聴率は13.1%と『序』とほぼ同じ。ジブリ作品には及ばなかったが、マニアックなアニメとしては健闘したとも言える。

今回、『破』の放送にあたり、本編開始前に「前回のダイジェスト」を追加するなど、一見さんにも優しい工夫をしているように見えた。日テレならではの配慮だと思う(番組開始早々タレントの応援を入れたのは賛否両論かもしれないが)。

だが、本当に優しい工夫だったのか。海が赤くて生物がいないこと、アスカの名字が惣流でなくて式波であること、DATの曲が戻らずに進むこと、トウジが「なんやハズレか」と言ったこと、カヲル君が「今度こそ」と言っていることなどについては、何も解説されていない。言い換えると、この「新劇場版」シリーズが、アニメ本編とは別のループ世界にいることは説明されていない。これで一見さんにも優しいと言えるのだろうか。

想定されている一見さんは、そもそもアニメ本編を観ていない人なので細かいことは気にならないはずという判断かもしれない。あるいは、それを丁寧に解説したら、かえって一見さんに優しくないことになってしまうという判断かもしれない。

だが、このループにこそ、この新劇場版の醍醐味があるのではないかと僕は思う。人類補完計画が発動し、それでも「神」の目論見は達成されなかった。だからやり直している。それこそが新劇場版だ。そして、今回のループでは「神」の描いたシナリオ通りに進むのかというのが最大のポイントだ。果たしてその点に言及せずに、一見さんにこの作品の見所を伝えられるのか。

魔法少女まどか☆マギカ』の第10話を見ずには11話・12話で感動できないのと同じように、新劇場版のループ設定を知らずには『Q』を楽しめないのではないだろうか。

楽しみにしていたQの予告パートは十分思わせぶりで、早く観たいと思わせた。だが、今回のTV放送によって新たなファン層を広げたいうことでれば、あと一つだけ解説を加えても良かったのではないかと思う。画竜点睛。まあ、これも愛する作品への思い入れゆえなんだろう。ええキモイですが何か。