また騙されてエヴァ見に行ったわけだが…『ヱヴァQ』

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を観たものが、続編である『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を公開そうそう見に行くのは自然な流れだ。特に予告でこんな事を言われた日には…。

レイとシンジを取り込んだまま凍結されるエヴァ初号機
廃棄される要塞都市 幽閉されるネルフ関係者
ドグマへと投下されるエヴァ6号機
胎動するエヴァ8号機とそのパイロット
ついに集う 運命を仕組まれた子供達
果たして生きることを望む人々の物語は何処へ続くのか

次回 ヱヴァンゲリヲン新劇場版Q Quickening
さあて、この次もサービス、サービスゥ

ということで見に行ったわけだが。

(以下ネタバレがあります)

…全然サービスしてない(苦笑)

特に、冒頭から30分はまったく意味不明。戦闘シーンはやたらかっこいい。『劇場版Zガンダム』や『マクロスF』が霞んでしまうくらいに。だが、『Q』では、どういう状況で戦っているのかさっぱり分からないので、アクロバティックな改2号機のアクションや、サポートする8号機の色っぽいラインにも、まるで燃えられない。この「視聴者置いてきぼり感」は、まさにTV版〜旧劇場版で庵野秀明が視聴者に対して与えてきた雰囲気そのものだ。

そう。「ヱヴァ」ではない。「エヴァ」が帰ってきた。エヴァはエヴァだった。庵野は庵野だった。そして、シンジはシンジだった。『破』で「綾波を…返せっ!」と覚醒したシンジは、もうここにはいない。

もっと言えば、その覚醒シンジに対して「行きなさい!シンジ君!!誰かのためじゃない、あなた自身の願いのために!」と背中を押したミサトさんも別人格になってしまったようだ。

いったい何があったのだろう?

視聴者が根本的な疑問を抱えながら話を追っていく。すると、『破』のラストのサードインパクトのせいで、NERV本部や第三新東京市が破壊されたのだということが分かる。そこからミサトやリツコが反NERVの組織を結成し、パイロットとしてアスカとマリがエヴァに乗っていると。そして、あの日から「14年経っている」ことが明らかになる。

…庵野監督は、どこまで、ファンを見下して、神経を逆撫でするつもりなんだろう。

「14年」というのは、もちろん『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』の公開が1997年であり、そこから14年経ったということと重ね合わせている(正確には15年経っているが)。『Q』の前座で『巨神兵東京に現わる』が実写の東京を映し出したあたりからイヤーなデジャヴを感じていたが、やっぱり、というところだ。「14年間いろいろなことがあったのに、あんたは全然変わっていないじゃないか」という皮肉を突きつけている。

巨神兵…』は栄華を誇る東京の街を破壊し尽くす。『Q』は「綾波を守るためにエヴァに乗って使徒と闘うたくましいパイロット」という『破』のシンジのイメージを破壊し尽くす。

いったい何がやりたいんだろう?

庵野の他の作品から類推して見る。彼が総監督を務めた『Re:キューティーハニー』は「天」「地」「人」の三部作だったが、「天」で縦横無尽で暴れまくったハニーが「地」で欝なサイクルに入り込み、最後の「人」で大復活を遂げた。とすると、『ヱヴァ』が同じように次の最終作で「シンジ復活!」となる可能性は相応にあるだろう。今作のシンジはミスディレクションなのかもしれない。

いや、実際には、そこまで考えてさえいないといのが真実ではないか。「思わせぶりな描写」→「伏線?と思って深読み」→「斜め上な展開で投げっぱなし」という、いつもの展開だろう。予告さえ裏切る。これこそがエヴァンゲリオンであり、庵野秀明ではなかったか。期待などしてはいけない。

といいつつ、次回作『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は2013年公開予定。タイトルの最後の記号はリピートを意味する音楽記号。ということは…