12年はエヴァな年―貞本エヴァ13巻

"69 annee elotique(69年はエロな年)"とジェーン・バーキンセルジュ・ゲンズブールは歌った。
それになぞらえれば"12 annee evatique(12年はエヴァな年)"だと言わざるを得ない。

そう。今年はエヴァ・イヤー。貞本エヴァの新刊、そして「新劇場版ヱヴァンゲリヲン・Q」の公開。このシンクロは偶然だろう。貞本エヴァは、約2年半という刊行サイクルを変えていない。一方、Qは制作遅延してのこのタイミング。いくら角川でも両者のシンクロをコントロールできなかったろう。

だが、角川はこのシンクロで儲ける気満々。コミックは通常版の発売に20日ほど先行して「プレミアム限定版」を刊行。4大特典付で893円。早く続きの読みたいファンはこれを買うしかないという仕掛け。このオタクの弱みにつけ込むところがいつもの角川商法。今日も平常運行。

その特典というのは、描き下ろしポストカード(6枚組)、「貞本義行セレクション スペシャル画集」(50ページ)、限定版カラーイラスト3Dカード。3Dカードは「オマケ」のレベルだし、「スペシャル画集」はモノクロなので、正直あまりプレミアム感がない。そもそもこの「限定版」はどこの書店にも大量に山積みされているし。だが、描き下ろしポストカードは良かった。貞本義行がアスカスキーであることがよく分かる出来。通常版より早く読めるというメリット以外にも、このポストカードだけでもプレミアムを買う理由はあると思う。特にアスカ派ならば。

さて、肝心の中身。いよいよエヴァの物語も終盤。サードインパクトが起きようとする中、シンジは己の心と向かい合う。己の過去と向かい合う。

庵野秀明の独りよがりな展開とは異なり、貞本義行は一つ一つのエピソードを丁寧に積み重ねる。だから、説得力がある。そして、どの人物にもスポットライトが当たることで、物語が「セカイ系」の枠にとどまらず、広がりを持つ。

「13巻」という意味のある数字で終わらせるかと思いきや、もう少々続く展開。だが、無理やり引き伸ばしている感じは皆無。次が出るのは恐らく2015年で『新劇場版』の完結よりもさらに遅くなりそうだが、いまから待ち遠しい。