香山リカがまたやってくれた。強引な決めつけを。
エヴァを視聴していた層が原発問題に関心を持っているという分析の当否はひとまずおいておこう。
それにしても、原発問題への関心を「逃避」と決めつけるのはいくらなんでも無理がある。危機はいまここにある。頭の中にあるわけではない。自分たちで作り出す必要もない。
いまは1990年代ではない。「行き詰る日常」に耐えられず、ノストラダムスの大予言を信じたり、サリンを開発して「アルマゲドン」という名の無差別テロを起こしたり、「人類補完計画」に夢中になったりしていた、あの1990年代とは違う。
誰かが化学兵器を散布しなくても、メルトダウンが起こり、水も土も空気も放射能に汚染されていく。どこまで危険が蓄積されるのか分からない。それが2011年の僕らの現実だ。
むしろ、3.11後に原発問題を直視する態度に「逃避」というレッテルを貼る香山リカの方が、実際には危機を認めようとせず現実から逃避しているのではないだろうか。
放射能が降り注いでいるのは、僕らの精神世界の中ではなく、その外側にある現実世界なのだ。引きこもることでは決して解決できない問題を見つめているのは、むしろ「僕ら」の方だ。
(…)彼らは、こころの平安を取り戻すためにゲームやアニメ、あるいはアイドルといったファンタジーに逃避し、気持ちを落ち着かせてきました。
ファンタジーの世界には、彼らが現実の世界で不満に思っていることは出てきません。登場したとしても、悪者として描かれるのでいずれ排斥される運命が待っています。
これまで、彼らが現実逃避のためにのめり込んでいった代表的なものが「新世紀エヴァンゲリオン」でしょう。
(…)そんな彼らが、いま原発問題に向かっています。
ファンタジーの世界ではなく、現実のなかに逃避を正当化できるテーマが出てきたからです。彼らにとって、これほど学びがいがあるテーマはありません。「新世紀エヴァンゲリオン」とは比較にならないほど高度に体系化された世界だからです。(…)
(「小出裕章氏が反原発のヒーローとなったもう一つの理由」香山リカ)
小出裕章氏が反原発のヒーローとなった もう一つの理由|香山リカの「こころの復興」で大切なこと|ダイヤモンド・オンライン