ちょっと現実離れしすぎ―『EVER17 -the out of infinity- 』

東浩紀が『ゲーム的リアリズムの誕生』で解説していた『EVER17 -the out of infinity- 』(PSP版)をプレイした。以下ネタバレ。

BEST HIT セレクション EVER17  ~the out of infinity~ Premium Edition

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本当にネタバレ。このゲームについては何を語ってもネタバレになってしまうから。

このゲームはギャルゲーの文法で作られている。選択肢によってフラグを立て、好感度を上げてお目当てのキャラクターを攻略する。そして、エンディングにはBADとGOODがある。

だが、それは大いなる騙しだ。実際にはこの作品の醍醐味は、その叙述トリックにある。「Ever17=ずっと17」というタイトルからしてミスディレクション。ずっと2017年かと思わせて、実はそうではないところがポイント。実は「ループもの」でもない。

自分の場合、全然論理的な方法でなく、早い段階でこのトリックを見破ることができた。それは、少年編で松永沙羅を見た瞬間。「小町つぐみとよく似ているとな」と。ひょっとして親子ではないかと。武編では全く登場しなかったのも、つぐみより後に誕生したと疑わせるのに十分だった。

作り手としてはもうちょっと不可解さを味わって欲しいところだと思うが、「沙羅=つぐみの娘」と思い始めると、これは一世代を挟んだスト−リーだということは見抜ける。全ての謎を整合する説明はできなくとも、全体の構成は見破れないものではなかった。それでも、ココ編で少年の顔が鏡に映る瞬間は、背筋がぞっとしたけれども。

プレーヤーの視点を利用した叙述トリックというのはゲームならではのものだが、あまりに現実離れした設定に依存している。なりすましの演技はまあよい。コールドスリープも認めよう。だが、人間そっくりのAIに、年を取らないウイルスに、クローン人間とSF設定を連発されると、トリック以前にこれはもう何でもアリだなという感じ。極めつけに「四次元」とか言われたりするのだが、もはや驚かなくなってしまう。これでよいのだろうか。ちょっと現実離れしすぎだろう。

キャラデザインや攻略方法などはゼロ年代のギャルゲそのもので、いまの基準で見るとちょっと古い。だが、システムは快適でさくさくプレイできる。それでも30時間近くかかってしまったけれども。

ということで、こめっちょ、こめっちょ。