宝物になる〜中村明日美子『鉄道少女漫画』

「鉄道・少女漫画」なのか「鉄道少女・漫画」なのか「鉄道・少女・漫画」なのか。いや、やっぱり「鉄道少女漫画」なんだろうな…

さて、白泉社楽園Le Paradis』のファンとしては、中村明日美子の復活は喜ばしい限り。もちろん無理はして欲しくないけど。ということで、中村明日美子の最新刊『鉄道少女漫画』を買った。いまなら、中村明日美子と黒咲錬導のコラボしおりが特典として付いてくるし。

短編集なのだが、「小田急線」をキーワードにして統一感のある連作集になっているところが見事。作品名は以下の通り。

「浪漫避行にのっとって」
「彼の住むイリューダ」
「立体交差の駅」
「木曜日のサバラン」
「夜を重ねる」
「青と白のリーム」
「ある休日」

内容的には、昨今流行の「鉄ヲタ漫画」でも「鉄子漫画」でもない。どちらかというと繊細な心理描写を楽しむという点で、王道の「少女漫画」路線と言える。出会いと別れ。すれ違いと相互理解。人生まだまだ捨てたもんじゃないと思ったり。

個人的ベストは『楽園Le Paradis』3号に掲載されていた「夜を重ねる」。終電のなくなった深夜の駅で出会った2人の女性。っと、これ以上はネタバレになるので自重(この作品はネタバレなしで読まれるべきだと思うので)。

鉄道も少女も漫画も好きな人にとっては、宝物になるはず。たとえ鉄道に興味がなくても、中村明日美子の繊細な世界にどっぷりはまれる一冊。

鉄道少女漫画

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