『PLUTO』の最終巻を読んだ(以下、ネタバレ)。
- 作者: 浦沢直樹,手塚治虫,長崎尚志
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/06/30
- メディア: コミック
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原作のある作品の結末にネタバレも何もないが、やはりアトムは史上最強のロボットだった。その「最強」というのは、力が強いとか、馬力があるとか、敵を倒すということだけではない。
人間の持つ感情や世界を動かす法則、それから人類の歴史の悲劇を理解し、なおかつ「感情」を超克して、憎しみの連鎖を断ち切り、人類を危機から救う。それが最強のロボットたるゆえんだ。
9.11のあとで僕らは知っている。「力が正義ではない」、そして「憎しみは何も生まない」と。そのことを手塚治虫の名作をリメイクすることで改めて世に訴えた浦沢は、偉大な漫画家だと思う。
ただ、一方でロボットの持つ「自己存在の不安」のようなものを深く掘り下げるかと思われた部分は、やや期待外れに終わった。やはり浦沢直樹という人は、内省的に自己を探求する文学者というよりも、むしろ正義を世に問う社会派ということになるのかもしれない。