前巻が発売されたのが昨年の12月なので、ほぼ1年ぶり。相変わらずの高い緊張感で描かれる浦沢直樹の『PLUTO』。
- 作者: 浦沢直樹,手塚治虫,長崎尚志
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/11/30
- メディア: コミック
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この巻では、最強のロボットであるヘラクレスがプルートゥに立ち向かう。彼は死闘の末、あと一歩というところでプルートゥを追い詰めるのだが、何か超えられない壁の存在ゆえに、敗れ、そして死ぬ。
エプシロンは、ヘラクレスの遺品としてメモリーをゲジヒトに渡す。ゲジヒトはそこで「プルートゥ」と出会う。「憎しみの連鎖」の中心に存在し、「憎悪」の塊であるはずの敵が、なぜこんなに優しそうな外見をしているのか。その答は次巻に持ち越される。
そもそも、ロボットの死は、人間の死とはどこが違うのか。そして、ロボットの感情は、人間の感情とはどこが違うのか。息子のトビオを亡くしてアトムを作った天馬博士。兄のアトムを亡くして悲しみを感じるウラン。両者の間の本質的な違いとは何か。
僕ら人間が全て「優等生」となったとき、あらゆる感情や情緒のバランスを保ったとき、それはむしろロボットに近いのではないか。また、高度に発達したロボットは人間と区別がつかなくなるのではないか。「完璧」ではなく、「出来損ない」の部分が残った方が人間らしいのではないか―
浦沢の向かう地平はそんなに単純なものではないだろうが、これからも目が離せない。