論理的に正しい推理小説〜『枯草熱』

スタニスワフ・レムによるミステリ。

レムのような才気煥発な頭脳にとっては、『ソラリス』のようなSFを書くことも、『完全なる真空』のようなメタ小説を書くこともたやすいことなのだろう。そして、この『枯草熱』のようなミステリでさえも。

これはアレルギーを持つ主人公が、ヨーロッパの都市をあちこち移動しながら、奇怪な事件の真相に迫るというもの。何が謎なのかは徐々に明らかにされていく。

ミステリのトリックというものは、往々にして偶然に頼っていたりとか、無理がありすぎたりするものだが、レムの仕掛けたトリックと、それを解き明かすさまは、さすがに科学の論理に従っていると唸らされる。

現在の視点からみると古びた感は否めないが、論理的に推論するという行為を描いた佳作。『ダヴィンチ・コード』の謎解きはロジックとしてどうなんだろうと思う人に薦めたい。論理的に正しい推理小説というのはこの本のことです、と。