スタニスワフ・レムの長編SF。『ソラリス』が1961年で、この『天の声』が1968年。
- 作者: スタニスワフレム,Stanislaw Lem,沼野充義,吉上昭三,深見弾
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2005/10
- メディア: 単行本
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かつてサンリオSF文庫で発刊され、その後絶版・入手困難となっていたのが、国書刊行会のレムコレクションとして新訳でリリースされた。
内容は、『ソラリス』や『砂漠の惑星』の路線を引き継ぐもので、異質な異星人とのファーストコンタクトをめぐる物語。この『天の声』は宇宙からのニュートリノ通信を解読し、遥か彼方異星に存在する知性に触れようとする科学者の姿が描かれる。
だが、ここでもレムは「科学という方法論で宇宙を理解することは必ずしも普遍的ではない」という立場でストーリーを進めていく。つまり、我々人類がいかに狭い認識の世界に住んでいるかということだ。
ということは逆に我々の尺度で「なぜファーストコンタクトがないのだろう」という問題を立てることが誤りなのかもしれないということを意味する。真実は「異なる知性は存在するが、我々がそれを認識できない」ということなのかもしれない。レムお得意の相対主義を推し進めた思考実験の結論がここにある。この到達点からハードSFの地平を切り拓いていくのは容易ではない。
その意味で、レムは実に罪な小説を書いたものだ。個人的には『ソラリス』と並ぶレムの最高傑作だと思う。