あの頃のポストモダン文学〜『完全な真空』

スタニスワフ・レムの『完全な真空』を読了。

完全な真空 (文学の冒険シリーズ)

完全な真空 (文学の冒険シリーズ)

国書刊行会だが「レム・コレクション」ではなく「文学の冒険」シリーズ。トマス・ピンチョンボルヘス等と並んで全15巻を成すうちの一つ。そう、あの、やたら「ポストモダン」という言葉が流行った頃の空気が感じられる

どの辺りがポストモダンかというと、「架空の本の書評」という体裁を取ったメタ文学というところ。内容的には、SFのパロディであったり、文学論であったり、宇宙論であったりと雑多。全体としては、レムのアイデアのほとばしりを「作品」ではなく「作品の書評」という形で効率よくまとめたという感じ。

レムの著書の中では「意欲的な実験作」と位置づけられているようだが、『ソラリス』や『砂漠の惑星』のような、SF長編の方が面白かった。