黒澤明のモノクロ映画はほとんど観ていたのだが、加山雄三が出演するというので敬遠していた『赤ひげ』を観た。例によって3時間という長尺だが、前半やや退屈、後半ものすごく充実という「黒澤ペ−ス」。そして、やはりこの映画の主役は三船敏郎だ。
江戸時代から医療をめぐる問題は現代と同じなのか、それとも現代の視点から江戸時代の医療制度を描いたのか。いずれにしても、人間の生死に関わる「医師」という職業の倫理観と、社会正義を正面から描いている傑作。原作の山本周五郎と監督の黒澤明がともに持つ「ヒューマニズム」の相乗効果がいかんなく発揮されている。
『生きる』にも通じるような臨終を向かえた人間の生き様をめぐるドラマあり。『酔いどれ天使』で描いた「人生に絶望して自暴自棄になった人間が更生する」場面もあり。期待していなかった「殺陣」のシーンもあり(ここでもミフネは強い!)、見せ場満載。
ある意味で黒澤映画の集大成であり、ミフネが黒澤映画に出演したのもこの作品が最後。これまで未見であったことを後悔した。
- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2002/11/21
- メディア: DVD
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (58件) を見る